卒業制作展作品紹介 その3

無事に幕を閉じた卒展。
悲喜こもごも…というか一喜一憂というか、沢山の来場者の皆さんに様々なコメントを頂き、最後のとても大切な学びの機会にした学生も多かったことと思います。
作品の紹介も今回が最後。 残りを一気に参りましょう!

 

須田 梨紗子

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Labiosは、身につけるカタチの口紅です。表情が出る口元は、あなたを映します。だからこそ美しい唇は、あなたを魅力的に見せるのです。ファッションの一部でもあるアクセサリーと口紅を融合する事により、気軽にいつでも持ち運ぶ事ができ、どんな瞬間も完璧で魅力的な女性でいることができます。その日のスタイルや気分に合わせてLabios(唇)を変えてみませんか?(須田 梨紗子)

 

後藤 将司

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私の卒業制作は「人と地域が繋がるモビリティ」というテーマを掲げ、観光地に向けたパーソナルモビリティを提案しました。

私の提案するVreehicleは日本の観光地に馴染みのある人力車をモチーフとし、様々な日本の観光地へ導入できるようなモビリティとしてデザインしました。

主な機能として

○自動運転技術を利用した観光巡り

○風を感じながら景色を見る事のできるシート

○SNSと連携し、思い出をお土産として共有する機能

人力車よりも気軽に、Vreehicleで観光巡りをしてみませんか?   (後藤 将司)

 

柏木 亮大

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N.A.R.V『New Amphibious Rescue Vehicle』=新水陸両用救助車

温暖化による異常気象で各地で大きな災害が発生している状況下にある今日、一般の救助車では走行することが困難な環境(水害・土砂災害)において迅速な人命救助を目的とした水陸両用救助車の提案。(柏木 亮大)

 

加治 志生吏

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私はサプライズをコンセプトに、動く収納棚を制作しました。

真ん中を軸に回転させる事で、魅せると隠すの機能を兼ね備えました。寄木細工のような模様が回転しながら移り変わることから、「ハコ」の意味をこめて「万華筐」と名付けました。私はデザインはエンターテイメントであると考えています。日々の生活に必ずしも必要とは言えないが、それがあることにより嬉しさ、楽しさ、美しさ、驚きを演出すること。集大成として、そんな卒業制作を目指しました。(加治 志生吏)

 

石谷 菜月

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でぃーぷ~深海をテーマにした雑貨たち~

潜水艦のお弁当箱とラブカの化粧ポーチとジュウモンジダコの巾着です。

毎日使うためにただ可愛いだけでなく、ちょっとした便利さをプラスしました。

(石谷 菜月)

 

天野 皓

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木材の柔らかさを追求した椅子。

木材のもつ暖かさ柔らかさのイメージを座った時に体感できる椅子。(天野 皓)

 

如何だったでしょうか?

どうなることかと気を揉んだ序盤戦のツケが回り、後半はドタバタのフィニッシュを力業でねじ伏せた学生もいましたが、私も出来るだけ美術館に足を運び、彼ら彼女達が一生懸命に来場者と話す姿を見ていると、自分達なりにデザインに向き合ってきた4年間は、充実したものであったと感じることができました。

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会場では、制作風景を編集したビデオを流していたのですが、ビデオの最後に今年のテーマ「デザインって何だ?」という問に対し、自分達の考えをフリップ1枚にまとめた画像がテンポ良く続きます。 彼らの明るい笑顔やおどけた姿を見る度に、彼らの未来が明るいものであることを願わずにいられません。

PD 金澤

 

3Dプリンター奮闘記

前回に続き卒業制作展で活躍した「ZEUS」の話題をもうひとつ。
2月21日の最終日を以て無事に閉幕した卒展では、プロダクトデザインコース以外の学生からも、使ってみたいとの要望がありました。
そのひとつは、グラフィックの澤木君からの依頼。 これは「ZEUS」の出力サイズを超える立体物の制作にトライする機会となりました。
形状はシンプルなマグカップと鏡餅型の立体。
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「ZEUS」の出力範囲は、203mm(W) x 152mm(D) x 144mm(H) ですが、今回のマグカップのサイズは高さが 240mm 直径が 150mm …直径だけでギリギリですね。 形状的には「輪っか」を積み上げて行く方向に出力するのが、一番自然で安定しそうですから、当然高さ方向で2ピースに分け出力です。

先ずはマグカップ。 形状はシンプルですので、データは簡単! 壁面に斜めに取り付けたいとのことで底に近い部分を斜めにカットしてあるところが少しトリッキーですが、「ZEUS」はサポートブリッジを作る程では無いと判断した様です。

出力も真円をベースにしていますので、それほど大きなハードルは無いと思っていましたが、問題は時間。 サイズが大きい上に、積層幅0.28mmで、出力の安定を図ろうと少しノズルのスピードをダウン。 2ピースに分けた片方だけで、出力予定時間はなんと9時間。付き合っていられないので、夜中に出力してもらって翌朝には出来ているパターンでGO!順調に動きだした「ZEUS」を見届けて帰宅。

翌朝、楽しみに学校に来てみると…なんという事でしょう!
途中で、何が起こったのか判らないほど、溶けたフィラメントがノズルの回りに固まってしまい、再起不能状態。 たまにフィラメントが切れたり、ノズルが詰まって流れが悪くなることはありましたが、santec さんの営業の方にしっかり教えて頂いた対処法で難なくクリアしてきたのに・・・見たことの無い惨状に目が点。
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朝一で、santec さんに電話。 忙しい中、来校頂きましたが打つ手無し…即ヘッド交換となりました…トホホ 続きは次回。

PD 金澤

卒業制作展作品の紹介 その2

21日まで愛知県美術館で開催されている卒業制作展の作品から紹介します。

会期/2016年 2月16日(火)~21日(日)
10 :00~18 :00
〈 19日(金)は20:00まで、21日(日)は17 : 00まで〉
会場/愛知県美術館ギャラリー・A 室-I 室
(愛知芸術文化センター 8 階)

 

都野 瞳

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京都にある源光庵という寺の゛悟りの窓゛をモチーフにしたお香の提案です。
陶器でできた香皿には砂鉄が詰められています。そのため、香立に仕込まれている磁石が付くようになっています。
移り変わる自然の風景と香りを、楽しんでいただきたいです。(都野 瞳)

 

坂井香菜

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「え?これどうなってるの?」「すごい!!」「きれい!!」こんな感動や驚きを感じてもらいたいと制作したのがこのSurge(サージ)です。

「機能面にすぐれ、合理的で経済的なモノが良いプロダクトだ」という傾向にあるのが今のデザインではないでしょうか。それらをすべて取り去って、自分なりの使用方法を見つけることが出来る、もっと自由なプロダクトがあってもきっとおもしろい。そう思ってこの作品を制作しました。

このプロダクトは、それ自身がとても美しいアート作品のようですが、自分のお気に入りのものを何点かか好きなところに好きなカタチで吊したり、引っ掛けたり、載せたり…するとより一層そのモノたちが魅力的に見えて、もっと好きになれるのではないでしょうか。

こんな日々の生活にアートを取り入れてくれる、また自由や楽しさをもたらしてくれる、この作品は「ステキなプロダクトデザインの在り方」の1つだと思い、この作品を提案します。(坂井香菜)

 

PD 金澤

 

3Dプリンター奮闘記

2月16日から栄にある愛知県美術館にて、卒業制作展・大学院修了展がスタートしましたが、この作品の制作にも3Dプリンター「ZEUS」は活躍しています。
しかも、プロダクトデザインコースのみならず、他コースからも3Dプリンターの活躍を聞きつけた学生からトライしてみたいとのオファーがありました。
今回はその実例をいくつか紹介してみましょう。

先ずは、プロダクトデザインコースの須田さんの作品。
コンセプトは、化粧直し用に携帯する口紅をバングルと一体化させ、お洒落に手軽に身に付ける新しいコスメの提案。

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バングル部と口紅の顔料をホールドするパーツ、またそのアクセサリーとしてのバリエーションのモデル化に当たり、先ずはサイズやデザインの試行錯誤から始まりました。

最終的にはメッキ仕上げの必要性から鋳物での制作に移行するのですが、アイデアを簡単に短時間で検証、確認する為に3Dプリンターが大活躍。

イメージする形状をスケッチから3Dモデリングソフトでデータ化します。

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パーツの分割や艤装構造、部品としてのクリアランス等をデータに盛り込み、出力してみます。

須田

ほぼイメージ通りにモデルが出力されました。 手前の出力は、顔料が入る部分と結合の構造を確認するためのハーフカットモデル。

顔料容量の妥当性やバングル部との結合構造の確認をしてみます。 すると結合用の爪の位置と大きさに問題があることがわかり、早速データを修正し再トライ。

今度は、右奥のモデルの様にトップ部とバングル部がピッタリとフィット。

もちろん、手首に付けてみてサイズや装着感、デザイン形状がイメージ通りかもこの試作品でチェック!

本番用の鋳造をサポートしてくれる学外のスタッフに説明する時にも、モデルがあるととても便利。問題点の共有や気を付けて欲しい部分などの情報を体験的に共有できるのも実寸大のモデルならではのメリット。

アイデアを簡易にスピーディーに具現化することができる…これが3Dプリンターの魅力ですが、これこそが、新世代のシステムデザイナーや製造業にとって新しいビジネスに結びつくヒントをもたらす重要な「ものづくり」の仕組みの変革なのです。

「ものづくり教育」の現場である美術系大学にとって、リアルな立体による試行錯誤が簡単にできることは想像以上に大きなメリットです。

さて須田さんの作品は、バングル部分のバリエーションと口紅の色サンプル、パッケージを含め特製展示台の上に見事に完成しました。 是非、会場に足をお運び頂き、そのクオリティーを御確認下さい。

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PD 金澤

 

 

 

 

 

 

 

 

卒業制作展スタート!

さあ、いよいよ今日から第23回名古屋造形大学卒業制作展・大学院修了展が栄にある愛知県美術館でスタートします。 私達プロダクトデザインコースも幅広いジャンルを対象に、各学生が大学生活の総括として各々のテーマに取り組みました。
今日から、数回に分けて学生自身のコメントと共に作品を紹介します。
美術館では、学生が自分の作品をプレゼンすべくスタンバイしていますので、是非、美術館にも足をお運び下さい。

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会期/2016年 2月16日(火)~21日(日)
10 :00~18 :00
〈 19日(金)は20:00まで、21日(日)は17 : 00まで〉
会場/愛知県美術館ギャラリー・A 室-I 室
(愛知芸術文化センター 8 階)

 

先ずは、この人から…

中井俊樹(大学院)

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日本文化をイメージする「履物」は古来から現代までその形において、大きな変化が見られませんでした。

これは西洋の文化を取り入れた衣服などと違って、西洋の道路整備や舗装技術等に基づいた生活環境の違いなどから、履物については西洋の文化を取り入れないまま現代に至りました。西洋との生活環境に大きな差異が認められない今日において、進化が止まったままの日本の履物について再考し、日本と西洋とのテイストを心地良く融合させた新たな日本文化の「履物」です。(中井俊樹)

 

野澤拓磨

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わたしが提案するのはU+Knitという新しい「カゴ」の提案です。一つのパーツを連続して繋げることで製品として利用することができます。また同じパーツをつかって別の製品に組み替えることもできます。「デザインの恩恵を未だ受けられていない人々」をターゲットとし、主に開発途上国に住む人々に使ってもらうことを前提としています。(野澤拓磨)

 

中村果歩

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身体障がい児童用リクライニングマットKOEBI【コエビ】

この作品は、脳機能による身体障がいを患う児童(子供)を介助する方を対象として作られた、児童用のリクライニングマッサージマットです。脳機能の不具合によって身体の筋肉の硬直化を防止・緩和の為に必要となるマッサージは、介助者の身体に大きな負担をかけます。その負担を軽減し、児童(子供)に対して介助者が心にゆとりを持って接する事が出来るようになることを目的とした介護用品です。(中村果歩)

 

田中真実

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歌って遊ぶ幼児向けの浴育玩具を制作しました。音認識の泡風呂&シャボン玉メーカーで、歌うと声に反応してシャボン玉がでてきます。

エスメラルダはバスタブのお湯にプカプカと浮かびながら泡を出し、モコモコの泡風呂にしてくれます。

自分の歌声がシャボン玉になり、かたちになった歌を見ることで歌う楽しさを知るきっかけになったり豊かな感性を育てることに繋がればいいなと思っています。(田中真実)

 

河北治美

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Toy Furnitureは子供の自由な発想で遊べる家具です。収納する棚や机、椅子としてはもちろん、積み木のよう遊んだり市販のおもちゃと組み合わせて遊ぶなど、遊びの幅が広げられるのが特徴です。一般家庭で使用するだけでなく、保育園や小児科の待合室などの公共施設でも使用できます。こんな自由な使い方ができる家具はいかがでしょうか?(河北治美)

 

片岡茜

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「今日を楽しく演出する場」をコンセプトとした棚であり、箪笥であり、クローゼットです。

季節の服やお気に入りの服を1週間分コーディネートし、そのまま仕舞っておくことで忙しい朝も早く選ぶことができます。また、鞄やアクセサリーなども一緒に仕舞い、鏡を付けておくことにより無駄な移動をせず全てその場で試着し、チェックすることができます。綺麗に飾り見やすくすることでお店で選んでいるような楽しい感覚と見やすさが時短に繋がることで自分の毎日を楽しく演出することができます。(片岡茜)

 

石川翔一郞

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日本の多くの観光地では、英語を話せる店のスタッフは少なく海外からの観光客は戸惑いを抱いています。そこで、お店と観光客との間で快適なコミュニケーションが図られるツールとしてデジタルサイネージ(電子看板)を提案します。使い方の事例としては、飲食店のメニュー、商店の商品一覧、或いは街並み案内など、様々なコンテンツが考えられます。デジタルなので内容の書き換えやリニューアルも簡単に出来ます。そして、この提案は、スタンド部にLED照明を付けて夜の店先や街の夜景を演出します。(石川翔一郞)

 

続きは、また次回! お楽しみに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3Dプリンター奮闘記

いつも水野君ネタなので、今日は並行して進めている沢山の試作の中から別のプロジェクトを紹介しましょう。

今や、クリス・アンダーソン著の「MAKERS〜21世紀の産業革命が始まる」にも出てくる様に、アイデアとPCがあれば、誰でも「ものづくり」が実践出来る時代。(ところで…この本、お薦めです。プロダクトの学生の皆さんにも読んで欲しいです)

3Dプリンターを始めとする「ものづくり」の仕組みの変化によって「工場による大量生産」の対義語は「職人によるクラフト作業」だけでは無くなりました。

製作に時間とお金が掛かる大掛かりなインジェクション成形機による大量生産を前提にコストを下げる従来の「ものづくり」は、安価で短時間で大きな設備を持つことも無く「モノ」を個人的に手に入れる仕組みに変わろうとしています。
3Dプリンターの出力精度も過去の2Dプリンターの進化を見れば、程なく2Dで言うところの写真クオリティーに近づいて行くことでしょう。

大袈裟な前振りはそのくらいにして…今回のトライは、とある家電製品のパーツが破損したことに始まります。
娘の、携帯音楽プレーヤーを防水ケースに入れ再生するスピーカーの脚が折れてしまったのです…T^T(済みません…私用に使ってしまいました…でも3Dプリンターの用途開発の題材ですので、どうか許して下さい m(_  _)m )
メーカーに問い合わせたところ、脚のパーツだけを補用品として買うことが出来ない…とのこと・・・よし、作ったる!

先ずは、破損した部品を採寸し2Dドローソフト(イラストレーター)で図面化!

部品

計測はノギスで、目盛りは目測ですが…上手くいきます様に!

次に、図面をベースに3Dモデリングソフト(今回は Shade)で、データ化。

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Shadeは、Illustratorのパスデータを読み込めるので、寸法精度が必要なデータはイラレで作ってから取り込むのが簡単!

最後に、ZEUSで出力・・・う〜ん、簡単!

出力時の積層段差はあるし、上部の細かい突起の再現性にはやや不満が残るものの、ペーパーで仕上げると、何とか見られるレベルに。

早速、破損部品と交換して艤装してみると…肝心の寸法精度も、まあ合格レベル。
使えます (^_^)v

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右側がオリジナル。 左側が3Dプリンターで出力した部品。 色合わせまでは無理…。

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脚の角度調整時のクリック感もちゃんと再現できました。

 

クルマ業界では、発表したモデルの補用品(交換用パーツ)を…或いは、その成形型を10年間は保管しています。 モデルチェンジ後もユーザーの事故による破損や故障で交換する部品が無くなると困るからですが、モデル当たり数千点に上る補用品を長期に渡り確保することはメーカーにとっても大きな負担です。

…でも重要保安部品では無い様な業界のパーツなら、簡単に自分で作ることができる時代になるのかも知れませんね。

ユーザーは、壊れた部品のデータをネットからダウンロードすれば、部品の到着を待つことなく家で…或いは出力センターなどで自作すればいいだけ!

メーカーも、ユーザーに渡すデータさえ持っていれば良いのなら、大きな型や作り溜めした嵩張る部品を保管する必要も無く、土地代も管理費も…これに掛かる金利だって不要になっていく時代です。

3Dプリンターが持つ「ものづくり」の可能性は、色々なところに波及しそうですね。

PD 金澤