2019卒業制作展/修了展振り返り

今年も無事に卒業制作展/修了制作展が幕を下ろしました。
今年は8名の学部生と1名の大学院生が、1年間をかけて各自のテーマに沿って研究を進めてきました。
4年前にこの学年が入学してきた時(当時は11名)、実技試験で入ってきたのは3名だけ…8名はセンター試験による学科、若しくはAOによる進学でした。実技以外で受験する学生が極端に多くなったこの学年では、表現力を求められる課題を如何に進めるかについて悩んだことが懐かしく思い出されます。そんな学生達の最後の課題を見ると一層こみ上げてくるものを感じます。
会場にて御覧頂くことが出来なかった皆さんにも是非学生の頑張りを感じて頂くと共に、頑張った学生達への餞(はなむけ)と、私自身の振り返りとして、まとめておきたいと思います。もしお時間が許せば最後までお付き合い下さい。

 

木俣舞佳:贈り手の想いを伝えるギフトパッケージ

前期は3年生との合同授業を実施している。当初より「ギフト」をキーワードに3年生と一緒に展開したリサーチのステージに於いて、彼女がまとめた資料はとても興味深かった。様々な身近な人に「プレゼント」を選ぶ時に、どんな意識や気持ちで「モノ選び」を行っているのか? 複数の欲しいモノを事前に調査し、実際に店頭で見て選ぶ時の注視点は何か? 或いは、衝動的に欲しくなったモノにはどんな魅力があるのか? 自分の為の買い物とプレゼントの為の買い物を選ぶ時のパッケージの持つ意味の違いは何か?…など多岐に渡り、ギフトを選ぶ時のマインドや価値、価格とのバランスや想定するストーリーの分析を試みた。「パケ買いの心理分析」の中で、未知の中身に対する期待感や運試し感、イメージ通りだった時の満足感や達成感といった感情の動きについて考察しており、パッケージという価値について興味が深まった様だ。性別による購入動機の違いの中では、コミュニケーションを積極的に図り、共感/共有を得ることが大きなモチベーションになる女性にとって、「映えるか」を支配するビジュアル表現が如何に重要であるかのくだりには説得力があった。これらを踏まえ、人にモノを贈るという行為の中で、通常は商品の保護や見栄え、情報の伝達といったパッケージ本来の役割・機能に加え、贈り手の想いを伝える手段としてのパッケージに発展し今回の提案となった。従来、保護や説明書きといった機能的な役割を終えたパッケージが、そのままゴミ箱に直行せず別の機能に生まれ変わる…という発想自体は新しいものでは無く、市場や過去の学生の作品にもみることができる。彼女の今回のアプローチに少し「ひねり」が存在する訳は、ギフトを贈る側もどんなパッケージが候補に挙げられるのかが分からない点だ。中身の食材はもちろん贈り手が選ぶが、次のステップでは、贈る相手のキャラクターや贈り手との関係性、どんな世界観を望むのかなど、幾つかのパッケージ候補を得る為の質問に回答することになる。最終的に幾つかの候補の中から、中身との組み合わせを選ぶのは贈り手だが、どんな選択肢を得ることができるのかには、EC(Eコマース)の特性を発展させたAIなどが相手への最適化をサポートすることになる。贈り手/貰い手が双方共に発見や驚きの体験を共有することで、共感やコミュニケーションのきっかけ作りを意図している。贈りっ放しではなく、その後の「どうだった?」「思った通りだった」「意外だった」といった直接のコミュニケーションがそのイベントをより印象的なものに変える「ギフトの一部」になることが大切な様だ。


展示作品では、その一例として「中身が減っていくことが楽しみな万華鏡型ボックス」や「90度しかないお菓子の展示台が鏡のお陰で360度の豪華な見栄えに変わるティースタンド」「ゼリーの中を泳ぐ金魚が鏡面で増える金魚すくい型ゼリー」などユーモアが溢れるアイデアと和洋それぞれのイメージをお洒落に表現したものが並べられた。
まとめの中で「敢えて時間や手間を掛けることが豊かな時間」というキーワードが登場する。ボタン1つの操作であらゆるモノをコントロールすることが出来る時代に対するアンチテーゼ的な一文だが、「義理や習慣化しているギフトに人が関わる仕組み」の提案と捉えると発展性が見えそうだ。「不便益」とは少し異なるが「アナログ」や「マニュアル」な人間の介在を暗示する学生は多く、便利な一方で「モノ」と「人」との関係性について何か「もの足りなさ」を感じている時代なのだと感じる。

 

久保ちひろ:気持ちをスイッチする新しい入浴スタイルの提案

コース内 優秀賞おめでとう。
冒頭、学科入試での進学者が多いことに触れたが、彼女もそのひとりだ。彼女について印象に残っているのは、1年生の早い時期から授業後にひとりでアトリエに残り、課題作業を黙々と進めている姿をしばしば目にしたことだ。 デッサン力が未知数な学生が多いこの学年での授業の進め方について危惧していたが、彼女がひとりでコツコツと作業を進める姿は私にとって大きな救いであり励みだった。(実家が遠方で下宿生だったため、単にひとりのアパートに帰るよりも良かっただけなのかも知れないが…^^;)

閑話休題…
「最近のひとり暮らしの若い世代では、湯船に浸かることなくシャワーで入浴を済ませる人が増えている…」そんなリサーチ結果が彼女のプロジェクトのスタートとなった。本人も大学生活をひとり暮らしでスタートさせ、湯船に浸かる入浴が殆ど無くなったと実感している。湯船にお湯を溜める時間や準備の面倒さ、ひとり暮らし世代に主流のユニットバスでは追い炊きや保温機能が乏しい為ゆっくり出来ない、或いは経済的な理由などがその根拠で、確かに日本人が好む理想の入浴スタイルとは随分違うと感じる人もいるだろう。日本には入浴に対して昔から西欧とは異なる文化があり、拘りを持っている人もいる様で、お風呂にお金を掛ける人の気持ちを理解できる人も多いと感じる。ユニットバスにはお約束の様に、湯船がビルトインされているのが一般的だが、入浴をシャワーで済ませてしまうスタイルがより一般的になるのなら、浴室は本来の機能を果たすことの無い無用な空間に成り下がる。身体を清潔に保つ機能に特化すれば、合理的・効率的・経済的にもそれで充分なのかも知れない。彼女もまた、当初この合理的視点に立ち「時短」としてシャワー中心の入浴スタイルを捉えていた。何かと忙しい毎日の中で入浴に費やす時間と経費を省略出来る仕組みとしての浴室を再定義しようと試みた。1970年の大阪万博で紹介された「ウルトラソニックバス」や消火器メーカーが提案する「ファインバブルシャワー」など、楽チンに/簡単に入浴効果を得ることができる「洗う仕掛け」を考えることで「健康」「リラックス」「時短」を追求した時期を経て、前期が終わる最後に、リラックス/リフレッシュ/気持ちのスイッチを目的とした「体験価値」に移行した。きっかけとなった彼女とのレビューの中で面白いと感じたのは「従来、お風呂は湯船に浸り『ボーッ』とする時間だった。寛ぎながら1日の疲れを癒やし、明日への気力を充電する場所だったが、湯船に浸からない入浴スタイルのせいで私達は『ボーッ』とする時間を失ってしまった。寛げない、疲れも癒えない、明日への気力も湧かない悪循環に入るきっかけが「風呂」にあるのでは無いか?」という視点だ。最近は「ボーッと生きてんじゃねーよ」と5歳の女の子に叱られる時代だが、作者は「ボーッとする時間をちゃんと持たなければいけない」というメッセージを持った。「リラックス/リフレッシュ/気持ちのスイッチ」は日本人が好みそうな本来の入浴の意味とシンクロするが、従来のバスメーカーが提案する様々な…至れり尽くせりの浴室と、どう差異化を図るかが次の課題となった。当初、間を通り抜けることでシャワーを済ませることが出来る通路型ブースを玄関と部屋の間に置くレイアウトを考えていた様だが、さすがにリアリティを出すにはハードルが高かった。最終案では、従来のユニットバスの占める床面積を超えること無く円柱形の浴室にすることで、「角」の無い広さ感の演出と合わせ、未来の…或いは宇宙船の中の様な非日常的な空間に辿り着いた。湯船が無い為、たっぷりとした広さを感じながら、様々なマッサージ効果を生む8つのシャワーヘッドを備えた「シャワーゾーン」と、ゆっくり腰を掛け、お気に入りの音や照明、香りなどで五感を満たしながら寛ぐ「リラックスゾーン」を設けた。

モデルの制作には、スケールモデルとは言え、どんな空間なのかを伝えることが出来るサイズと装備が必要だ。リングに吊した糸状のカーテンで実寸サイズを暗示させ、ビジュアル類は青と黄色を基調、全体の世界観には明るく柔らかい色合いを中心に優しい彼女なりの世界観があった様だ。内側壁面の処理については、素材や質感の変化などを設けたかった様で、確かにやや質素なまとまりになった点は否定しない。もう一色…素材、質感、ディテールなどにアクセントとなる機能や要素が欲しかった。
「入浴」という時間や場所を今の時代に合わせ、新たな体験価値に変えたいという視点に共感でき興味深い考察になったと感じる。展示を御覧頂いた知人から「シャワー中心の欧米や、女性専用のお洒落なカプセルホテルなどにも市場があるのではないか?」とのコメントを頂いた。

 

例年、卒展会場では制作風景をまとめた動画の上映をしているが、今回の動画は撮影と編集の殆どを彼女が担当してくれた。そんなものを作って上映したり論文を課しているコースなど他に無いので、学生にしてみれば迷惑なタスクかも知れないが、自分の作業と並行して文句ひとつ言わずに最後まで頑張ってくれた姿は、やはりひとりでアトリエに残り課題に取り組んでいた当時の姿と重なって見えた。

 

中島知哉:アクティブセーフティー機能を装備したバイク用プロテクター

教員展選抜、おめでとう!
「作者本人はバイクには乗っていない」という点が今までの展開とは少し趣を異にする。卒制に取り組むテーマは、勿論、学生達自身が興味関心の深い分野から選び発展させていくことが常であるが、近隣の各美術系大学の最近の卒制を眺めてみると、その中でも「公共や社会的な問題」よりも自分のパーソナリティーの延長線上にある等身大のテーマを選ぶ学生が多いと感じる。つまり自分が好きな趣味の世界であり、癒やされたい自分を満たすものであり、身近な生活の一部を切り取るところから導き出されるモノが多いのではないかと思う。だからこそ、その問題を自分の問題としてリアルに捉え、或いは趣味の世界で培った知識や情報ネットワークを駆使することで、より深みにはまっていける。 そんな中で、彼は、勿論バイクが嫌いな訳ではなく、逆に学生時代に「危険だから」という親の反対を受け、自由にバイクに乗ることが出来なかった事実が原体験になっている。「安全性」を担保することが難しい乗り物故に同じ理由でバイクを否定される後輩達へのエールが原動力なのかも知れない。


最終的にはかなり劇画調の激しいビジュアルになり、当初の「事故時のダメージが大きい50ccバイクのライダーでも気軽に装着できる路線」からは離れ、存在感のあるアウトプットとなったが、元々モンスターなどのフィギュア作りなどにも造詣が深く、スカルプター作業が得意な一面が、その片鱗を覗かせた様だ。

アルファゲルや人工蜘蛛の糸などのエネルギー吸収剤や強度の高い新素材などにもリサーチを拡げ、強度、しなやかさ、通気性などプロテクターウエアに必要な要件を彼なりに模索した。守るべき筋肉の構成をベースにした解剖学的な視点も取り入れた様だが、柔軟さと両立する為に、ややカタチが説明的なレイアウトになった感は否めない。インナーとして着用するには構わないが、アウターとしては好き嫌いが分かれる意匠かも知れない。
彼のアイデアの中で是非、実現させて欲しい装備は、バイクとBluetooth で連動して作動する制動灯、方向指示器だ。自動車では、Bluetooth でスマートフォンが連動し電話や音源、ナビ情報などを一元化するシステムは存在するが、バイクはこの点では遅れている。また自動車にはハイマウントストップランプと呼ばれる、後続車に向けて高い位置にセットする灯火器が法規で定められているが、バイクはこの点でも後続車へのアピールが難しいモビリティだ。二輪の灯火器法規の解釈は必要だが、ライダーの背中の位置で後続車にライダーの意図を伝えるアイデアは有効だと思う。
マネキンは回転させることが出来る様だったが、展示では、この背中部分のアピールを積極的に見せても良かった。
周囲の展示方法にも彼なりの拘りがあった様で、フレームの一部にアクセントカラーとなった黄色いロープを張り、フレームから展示パネルを吊すアイデアを提示してくれた。本人の意図とは異なるかも知れないが、枠にもっと沢山のロープを張り、ロープによってパネルが宙に浮いている様な演出も、ネスト(蜘蛛の巣…人工蜘蛛の糸からの連想)を緩衝材として「モノ(パネル)」が安全に受け止められているイメージが表現出来て良かったかも知れない。(蜘蛛の巣なら、その後捕獲されて食べられてしまうが…)
アパレルでは無いが、衣服に関連するテーマは近年無かったので、モデルのプロセスや仕上げのクオリティなどに不安材料を抱えたが、新鮮で勉強になった。

 

長峰隆磨:ディフェンダーに特化したサッカーシューズの提案

JIDA 最優秀賞おめでとう。
4年生になる前から、サッカーのスパイクに取り組みたいと考えていたという彼は、自身もプレイヤーであり強豪チームの中でかなり鍛えられていた様だ。実際にサッカーの話を始めると豊富な知識を持っており、スパイクについても様々なメーカーを履いてきた経験から自分なりの思想とアイデアを温めてきたと感じる。スパイクに限らず「靴」が好きな様で、普段から…ソールがメッキの樹脂部品で出来たロボットの仮装に使えそうな靴や、シームレスですっぽり足を包む様な不思議な質感の靴など、靴に対する拘りと関心の高さを見せてくれた。


彼のテーマを始めて聞いた時、スパイクメーカーが…それこそ朝から晩まで科学的に専門的な研究を進め、あらゆるモノが揃っている様な分野で、どう新しいものを見せていけるのかと不安を感じた。しかしながら、現役時代ディフェンダーだった彼と話していると、時代によって戦略やゲーム展開、プレイ技術やそれをサポートする用具も目まぐるしく変化し、トライ&エラーが繰り返されている実体を知るほどに、非常に面白いテーマだと感じることが出来る様になった。印象に残っているのは、ディフェンダーの移動距離が長い(攻撃に参加する)試合ほど勝率が高いデータを背景にディフェンダーの役割を再定義していくことが新しいスパイクのカタチになると彼が言い出したことだ。トップアスリートの様に自分の足型を取る様なカスタムオーダーが出来ないアマチュアプレイヤーにターゲットを絞り、グランドコンディションの違いや片減りなどの部分摩耗に経済的に対応する仕組みとして、スタッドパーツを前後に分け部分毎に交換出来るアイデアや、イレギュラーなアタックを低減する為にシューレース無しで足へのフィットを実現するインナーとアウター素材、派手さだけでは無く各部の凹凸にボールをコントロールする上での意味をきちんと与えたアウター形状、2重構造を効果的に見せる透明素材を用いた遊び心、ディフェンダーの新しいプレイスタイルを支えるクイックターンや直進時のグリップに効果的なスタッド形状とそのレイアウトなど、細部にまで彼の想いがぎっしり詰まっている。スパイクというサイズの中に様々な意味のあるカタチ、機能を備えた素材、部位により異なるディテールなどの要素が詰め込まれたモデルを実現する上で興味深かったのは、モデル素材の調達と加工方法だった。ファイルと呼ばれる靴型を調達し、スパイクとして必要なフィット感に見合う形状への加工、継ぎ目無く曲率が大きく、沢山のパーツが隣り合う複雑な曲面の再現、ボールコントロールを支配する凹凸を布地にエンボス加工するアイデア、3Dプリンターを駆使しながら実現したユニークなスタッド形状など、どれをとっても彼の試行錯誤や苦労が思い出される。ビジュアルとして拘ったインナーファブリック開発には、自動車メーカーにシート生地を提供しているセーレン株式会社の名古屋営業所に相談した。海のものとも山のものとも分からない学生相手に、デザイン部の北川部長と上玉利主管には親身に相談に乗って頂き、適切なアドバイスやイメージに沿った試作品の提供を頂いた。光沢感やレイヤー感のあるブルーの色合いなど本人のイメージピッタリにチューニングして頂いた生地は、今回の白基調のスパイクに素敵なコントラストを与えてくれた。(セーレン株式会社には、この場を借りて、改めて御礼申し上げます)
鋼鉄の靴を履く神話から命名したという「VIDAR」というブランド名など、ストーリーも良く出来ており、また壁面一杯にイメージ画像や開発途上のアイデアスケッチなどを散りばめた展示もユニークで、JIDA への最終プレゼンでは熱い想いを伝えてくれた。学内の最終審査では展示物が揃わず、公正を期す為、学内の賞選考からは外したが、作品に掛けた熱意をJIDAが汲んでくれたことが何より嬉しかった。

 

中山太平:スバル360をモチーフとしたEVスポーツカーの提案

彼は入学前のオープンキャンパスの時から、クルマ好きであることが伝わってくるキャラクターだった。街中を走る殆どのクルマの名前が分かる特技があり、日本車だけでは無く、古今東西のクルマを見るのが好きな様だ。これは自動車メーカーに勤めている(いた)人間にはとても良く分かる。小さい頃、母親に連れて行ってもらった散歩の道中では、線路沿いや国道沿いが一番のお気に入りの場所で、走る列車に手を振り(当時は、貨物列車の運転手さんの中には手を振り返してくれる人もいた平和な時代だった)、往来するクルマのペットネームを次々に呪文の様に呟いた経験を私も持っている。「この子はクルマの名前を何でもパッと当てるのよ〜」という母親の井戸端会議での会話を耳にしては「もっと頑張ろう!」と決意を新たにする毎日だった。やがて、名前を判断する為に覚えたクルマのスタイリングに興味を持ち始め、これを作っている人がいることを知り「デザインってすごいかも…」とオリジナルのクルマの絵をタンスに描いて怒られるのだ…  私か。

余計な前置きが長くなったが、彼の作品は、日本のモビリティ黎明期を飾った国民車のはしりと言える名車:スバル360をモチーフに、AWDのコンパクトスポーツカーに生まれ変わらせるプロジェクトだ。最近の若い世代を対象に「クルマ離れ」なる言葉が一般化し、デザイナーを目指すプロダクトデザイン分野の学生でさえ、カーデザイナーを目指す人は減った。彼も自動車部品を設計するエンジニアの道を選んだが、昨今のクルマのデザインには一家言ある様だ。つまり、最近の…つり目の強面で特徴付けの為のキャラクターに走るデザインに食傷気味で、成形技術に制約がありながらも個性があり表情豊かな昔のデザインに新たなブランド価値を持たせたい…というもので、クルマ好きの人間には多かれ少なかれ共感できるテーマではないかと感じる。FIAT 500やBMW MINI、生産は中止されたがニュービートルなどの成功例もある。「テントウ虫」の相性で広く知れ渡ったスバル360は、丸みを帯びたキュートな佇まいとパッチリした丸目が愛くるしい存在感を今尚放っている。作品では、インホイルモーターによるEVをパワートレインとし、コンパクトな2名乗りのパッケージを全長2900に収めるレイアウトとした。往年の丸いキャラクターを引用しながら最近のクルマのデザインに一石を投じたいということだろう。最終の展示では披露されなかったが、リサーチの段階でコンパクトカーとスポーツカーをマッピングして、時代の流れを俯瞰するチャートを作成したが、改めて振り返ってみると、クルマのデザインの傾向の変化を見ることができ、またその先を予見する手掛かりとしても興味深かった。過去のデザインを今に甦らせるテーマや狙いについては、(新しくは無いが)理解できるもので、上手く行けば幅広い世代から共感を得ることができるアウトプットが期待出来る取り組みだ。クルマのデザインで大切なパッケージングとディメンション、スタイルの核となる造詣テーマや世界観などの中で(色々な考え方があるが)骨格が持つカタチの強さやバランス、全体を貫く造形言語が明快なクルマには、やはり強いメッセージを感じることが出来るが、始めて作るスケールモデルには苦労した様だ。クレイでは無く、硬質ウレタンフォームは、加工はし易いが修正が困難で、削り過ぎることへの不安か、なかなか思い切ってザクザク削りながら図面に近づけることが難しかった。最初に大きな塊やカタチを掴むことが重要だが、シンプルな造形ほど基本的なバランスや素の美しさに最新の注意が必要な難しさがある。心地良いクルマのスタンスを実現する難しさを感じた1年だったのでは無いかと思う。スケッチやモデル、図面のクオリティーには、まだまだ進化の余地はあるが、最後までブレることなく同じテーマに取り組めた点は良かった。

 

長谷川由真:防災設備になる遊具と平常時からの防災意識を高める取り組みの提案

コース内 論文賞おめでとう。
彼女は、当初、同じ防災/減災のテーマの中でも、ハンディキャップを持つ人へのサポートをテーマに取り組み始めたが、教育実習で訪れた小学校の現場を体験して以降、日中、離ればなれになる親と子供の安否確認手法…といった方向にシフトした。携帯する通信器機の様なプロダクトに集結するかと思いきや、中村区役所(防災避難公園となっている中村区の米野公園を管理する部門)の職員とのインタビューを経て、防災設備の平常時での使用を推進することで、防災用具の使い方を知り、日常的な防災意識の醸成を促す仕組みへの取り組みにシフトしていった。

 

 

プロダクトデザインを学ぶ現場で近年特に感じるのは、扱うフィールドの広がりで、従来的な物品としての商品に完結するに留まらず、ビジネスモデルやブランディングなど幅広い領域にはみ出していきながら総合的にデザインをプランニングしようとする学生が増えてきたことだ。昨年度の「旬野菜ラボ」や一昨年の「ゆるふわタウン」の様に解決方法にはアナログ/デジタルを問わず、生活者の体験価値を促すアイデアがプロダクトを学ぶ研究から生まれてくることはとても良いことだと思う。
彼女のコアになるアイデアは、防災商品を日常的に使用することで、いざと言う事態でのトラブルや困惑を解消し、日頃からの防災意識を高めようというものだ。熊本地震では、避難する公園などに多くの防災/減災設備があったにも関わらず、誰にも使い方が分からず役に立たなかったという事例も踏まえ、何処か自分事では無いと信じがちな「正常性バイアス」によるリスクの増大は注目すべき課題のひとつだ。むしろ如何に「自分事として『災害』と『生活』を結び付けることが出来るか」の意識改革こそが早急に解決すべき問題とさえ感じる。
彼女の手法は、実在する石作公園を事例として「犬山防災マルシェ」という、日常でのイベントを企画する仕組み作りだ。 彼女は、自助/共助/公助の段階に於いて、初期の自助…自力で何とかできるフェーズはともかく、日頃からの地域間での交流や結びつきが希薄な現代にこそ「共助」の為の下地作りとしての地域興しが有効であると位置付けている。「マルシェ」という言葉は高齢者には馴染みが少ないかも知れないが、朝市や蚤の市、フリーマーケットやガレージセールといった簡易な市場としてのイメージが一般的だ。 非常時での避難場所に指定されている公園で地域ぐるみでイベントを開催することで、公園までのトラフィックや地域で暮らす隣近所の人々とのネットワーク作りを推進することが狙いだ。以前は、春には花見、夏には盆踊りや夏祭りが盛んだった記憶もあるが、「うるさいから除夜の鐘をつくな」という悲しいクレームが入る時代には、盆踊りなど夢のイベントになっていくのかも知れない。
地域との結びつきが弱くなっている現代にこそ、失った代償を冷静に見直すべき…と彼女は伝えている。デザインの力でそれが実現できるなら素晴らしいことだ。最終的なアウトプットでは、汎用性が求められる課題ではあるが、実在する公園をモチーフにしたからこそのユニークさが、もっと特徴的に表出すると更に良かった。非常時にはシェルターや簡易テントに早変わりする遊具や、かまどになるベンチ(同類のものは既に実在するが)などのプロダクトと、「犬山防災マルシェ」という仕組みの提示とその企画をプロモートする為のグラフィックやノベリティなど多岐に渡り、個々には興味深いアイデアが沢山あるのに、全体として…それぞれの深掘りや特徴付けなどが、やや薄まった感も残念だった。「犬山防災マルシェ」を地方行政とどう結び付けながら実現するかや問題点の抽出、プロモートの為の周知方法やノベリティーの配布方法、具体的なマルシェの企画など、もう一歩リアリティーに踏み込んでみるとブレイクスルーできた気がする。しかしながら、彼女は最初のステージから論文の量が抜きん出ており、2転3転しながらも素早く軌道修正し、計画的に自身のプランをコントロールした進め方は素晴らしかった。

 

彦坂知希:洗面台と洗濯機を一体化したシステムランドリーの提案

桃美会賞、JIDA 優秀賞、おめでとう。
彼は2年生の時にデザインパテントコンテストで入賞した「ハンガー」を着想のきっかけとし発展させるかの様な構想で、「洗濯」やその周辺にある用品や仕組みについてアイデアを広げようと試みた。つまり、「脱衣」→「溜める」→「洗う」→「干す」→「取り入れる」→「畳む」→「仕舞う」→「着る」の一連のルーティンの何処か、或いは複数のフェーズに効率化や合理化を図り、新しい「家庭内クリーニング」のプロセスを提案しようとしていたと思う。その一環に件の「ハンガー」がしっかり位置付けられる様なイメージを持っていた。彼は自宅通学のため自分で洗濯をする生活環境では無かった様だが、「畳んで仕舞うプロセスを省けないか」や「干して取り込む工程を簡略化できないか」といったプロセスを含めリサーチを進めた。そんな中で「脱衣→ストック→洗濯機の流れが、浴室と繋がる脱衣場となる洗面空間に集中していることから、テーマは「洗濯機とその周辺空間の効率化」に落ち着いた。


コアになるアイデアは、洗面台とドラム式洗濯機を融合するというユニークなもので、体調や年齢、性別などで異なる体型差をカバーすることを目的に全体が上下に可動する仕組みを内蔵している。
シンクと食器洗い機やオーブンやグリルが一体化されるシステムキッチンの様にユニット化していく流れの中に、システムランドリーの様な位置付けのものがあっても不思議ではないと感じさせてくれる。適した洗面台の高さと、出し入れしやすい洗濯機の開口高さは当然異なり「都度、動かすのか?」という疑問も頭をよぎるが、時間帯やユーザーが手にしているモノなどを画像認識で情報化し、AIが生活パターンや習慣などを鑑みながら適切な位置に自動で移動することを想定している。また、水栓とハンドドライヤーが一体化されたものもダイソンが商品化しているが、これを更にコンパクトにした想定で、シンプルな水栓を設け、タオル掛けなどのディテールの省略を試みている。
前後するが、省スペースによる動線の効率化の視点からひとり暮らしの若い世代が暮らすワンルームのアパートなどをターゲットユーザーの中心に据えイメージを広げた。紆余曲折のスタイリングの後に彼が辿り着いたのは、2つの円柱形が直交し相貫するインパクトのある形体だ。ややもするとイージーな印象にもなりかねない強烈な存在感を与えてくれるフォルムの上に、ハイキーな白黒のコントラストについては、内心「これでいいのか?」と感じていたが、モデルが出来上がるプロセスを見る内に洗脳され…慣れてきたのか、異質な佇まいを脳裏に焼き付けるにはこれくらいの振り切り具合も良いと感じる様になった。見ようによってはモダンでクールな家電にも感じるのは色の効果も大きいに違いない。最終形状については本人の考えを尊重したが、彼が制作途中に描いていたアイデアスケッチの中に、正面視で白い円柱の下端が洗濯機の扉の黒い円柱のシルエットに合わせラウンドしたものがあった。
据え置き型も想定し、実際にモデルが上下可動するためのアクチュエーターを内蔵する為に白い円柱の下に黒いスタンドが設けられているが、上述の下端がラウンドした造形の方が浮遊感が出て、上下可動する「塊」に軽快なイメージを付与できて良かったのではないかと感じた。制御系に詳しい客員教授のサポート無くしては実現出来なかったが、照明も含めワーキングモデルに仕上げたアウトプットは見応えがあった。

 

三谷彩乃:子供と一緒にストレスの低減を促す玩具機能を備えたアクセサリーの提案

作品のテーマは、女性は男性よりもストレスが多いという現実を背景に、その軽減行動に繋がるアイデアの模索だ。「無限プチプチ」や「無限エダマメ」に代表される様な単純行為の繰り返しによる「なだめ行動」(気持ちを落ち着かせるために人が無意識に取る様々な行為)を促す道具をウエアラブルなアクセサリーにした… というのが最も判りやすい商品フレームだと思う。ただし彼女の作品にはもうひとつ大切な切り口があり、小さい子供も一緒にそれを楽しめることを意図してる。
公園やショッピングモールなどで乳児を抱える人を見ると、沢山の荷物を抱えながら子供のケアに大変な様子は想像に難くない。取り分け母親は(こういう言い方は昨今では子育ては母親の仕事と決めつける不届きな表現と叱られるが)小さい子供が中心の生活の中で、時間は支配され、お洒落に気を使う余裕も無く、あらゆる危険から子供を守る神経戦の様な毎日を過ごしている人も多いのが現実だ。そんな中で、彼女が提案する「nadame」は、リング上のレールに数珠の様なボールが嵌め込まれたベアリングの様な装置だ。不思議な存在感を持つ形状だが、手に取ってクルクル転がしてみるとボールが嵌まっていない余白にボールが移動することで、心地良いクリック感の様な感触が「パチパチ」という算盤の珠の様な音と共に体感出来る。

材質には、透明感のあるクリスタルなイメージや半透明の淡いトーンを楽しめるもの、或いは、木の持つ温かみを感じる3つのタイプを再現し、それぞれに異なる質感や音色を楽しむことができる。 バングルのスタイルを取るがリング状である必要があるため、大中小のサイズを用意し素材と合わせ計9種類のバリエーションを持つ。

彼女は当初「新たな香りビジネス」に関わる何か…といったテーマを模索していた。
アロマセラピーやその効果に関するリサーチを行いながら、自らも調香士が主催するワークショップなどに参加しながら、香りの持つ可能性とその演出方法がインテリアの一部となる様な商品を模索した。気分転換を図る手法のひとつとして、フォルムをカスタマイズすることで、その日の気分に合わせたり、光や色との相乗効果で見せる照明器具への発展なども検討していた。カレイドサイクルと呼ばれる外側の面と内側の面が入れ替わる立体造形を取り入れる試みなど、「カタチ」の持つ面白さや遊具性については当初から一貫していたとも言える。
「癒やし」を目的とした「香り」から離れ、そもそも「癒やし」が必要な現在のストレス環境にリサーチが及び、男女差や性格の違いによるストレスの受け方の差異に気付き、女性が持つ多くのストレスの解消法を模索する流れとなった。自傷行為(爪を噛む、眉毛を抜いたり髪の毛を強く引っ張るなどの軽微なもの)も含む「なだめ行為」に注目しストレスを低減する為の単純作業をいつでも体感できる様にとウエアラブルの方向性を探ることとなった。上述の、小さな子供がいることで女性としての楽しみのひとつである「身を飾る」機会が奪われることと繋がり、装身具としての役割、更に小さい子供と一緒に楽しめる何か…というコンセプトは建設的な連鎖反応と感じる。
確かに、乳児/幼児用のおもちゃには、小さなボールをレールやシャフトの上で移動させる…子供がアフォーダンスの感覚を養う為の原理的な遊具もしばしば目にする。
優しい質感と触覚や聴覚を心地良く刺激するこの作品は、玩具であり、装身具であり、無意識に触れることのできる新しい「癒やし」のカタチなのかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 

陳思羽:簡単に角度設定を変更できる簡易テント用ジョイントの提案

彼女は中国からの留学生(大学院生)で、この2年間、実に精力的/計画的に研究に取り組んだ学生のひとりだ。来日以来、始めて地震を体験し、外国からの居住者達が言葉や文化/習慣の異なる異国で身を守ることに高いハードルや不安材料を抱えていることを身を以て体験したという。大学院1年生の時のテーマでも、ペットボトルのキャップの規格に合わせた「フィルター付き飲み口」による、非常時に於ける飲料水の確保を扱っており(平常時にはフィルターに含浸させたミネラルやビタミンなどの栄養素を摂取できる)、災害時に於ける危機管理に興味があった様だ。
研究の比較的早い時期から、避難場所に指定されている公園などの公共のスペースに非常時に設営される簡易テントやプライバシーの確保を目的としたパーティションの存在に注目していた。また同時に言葉の壁を越えた道具の使いやすさを実現する為に平常時での活用を促すアイデアが必要と考えていた。平常時での使い勝手を向上させ様々なバリエーションに対応するためのジョイント構造にも注目しており、Rhinoceros(3Dモデリングソフト)と3Dプリンターを駆使しながら、実に沢山のアイデア展開を見せてくれた。思い付いたアイデアを直ぐにカタチにして検証し修正していくことが今のデザインのプロセスでは大切だが彼女はそれを実践し、ひとつのアイデアに固執することなく次々に自分のアイデアを否定しながら「カタチ」を追求する探求心は実に素晴らしかった。


名古屋市内にある遊具メーカーの内田工業は災害時に使用される防災関連商品の製造も手掛けており、ここに勤める卒業生を頼ってインタビューを実施した。 この時に災害に備えた多くの装備(非常用井戸や非常用トイレ、かまどになるベンチや太陽光による照明器具など)を備えた米野公園(中村区)の存在を教えてもらい、早速現地調査を実施した。同公園を管理する中村区役所の担当部署職員にも時間を割いて頂き地方自治が準備している災害時への対応や取り組み、また問題点や今後の課題などは非常に興味深いリサーチとなった。
掲載画像では詳細を説明するのが難しいが、3方向に分岐するコーナージョイントをL字型パーツとI型パーツに分割し、I型パーツを接合部の溝に合わせるだけで簡単に60度、90度、120度、180度に設定することができ、最後に接合部のトップに蓋を付けることで樹脂の爪を押し広げ簡単にロックが掛かる構造を持っている。JIDA卒展訪問時に「非常時に使用するには簡単で明快な方が良いので角度調節は不要では?」という指摘も受けたが、角度調整できないのであれば現存するコーナージョイントと変わりなく新しさは何も無い。「簡単に」角度調節ができるからこそ平常時での利便性が上がり、用途が広がることで日常から使用方法に触れる機会が増え、いざと言う時の備えになるのだ。 非常時には簡易テントやパーティション、簡易更衣室などを組み立てることになるが、60度や120度の構造を持つことで、正三角形やそれらを組み合わせた平行四辺形や六角形、ハニカム構造などの展開が可能で、避難する家族構成や人数構成などにもきめ細かく対応できる可能性も増えるに違いない。また部品を増やさずに様々に角度の調整ができることのアピールとして、彼女は平常時での使われ方にも幾つかの提案をしてくれた。
大きな空間を扱うスケール感をどの様にまとめるかがポイントだったが、日常使いの楽しい場面の再現で、深刻な問題を楽しい展示で見ることができることも表現として大切なことだと感じた。

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さて、大学院生を含めた9名の作品は如何だったでしょうか? 今年はコロナ感染の拡大騒動で卒業式が中止になるという非常に寂しい幕引きとなりましたが、学生達が頑張った4年間(2年間)が無くなる訳ではなく、学生ひとりひとりが元気に新しいステージに歩を進めてくれることを願っています。小牧キャンパスも後2年の期限付きですが、また顔を見せに来てくれる機会を今から楽しみにしています。

PD/LD 金澤

DESIGN STUDY展開催のお知らせ

こんにちは!助手です。

この度、名古屋造形大学ライフデザインコース(旧:プロダクトデザインコース)、建築・インテリアデザインコース、ジュエリーデザインコース合同の展覧会「DESIGN STUDY展」を名古屋市民ギャラリーにて開催致します。

25th Design Study Exhibition
2019年5月14日(火)-5月19日(日)10:00-18:00(最終日のみ17:00まで)
名古屋市民ギャラリー矢田 第2-7展示室
名古屋市東区大幸南1丁目1-10 カルポート南
https://www.bunka758.or.jp/scd19_top.html

ライフデザインコースでは、LEDやスイッチ、加速度センサなどをプログラミングした2年生の作品や、3年生の椅子作品、4年生の陶磁器で制作されたソープディッシュなど、バラエティに富んだ作品を展示します。

この機会にぜひ足をお運びください。

 

2018年度卒業制作展振り返り

今年も無事に卒業制作展/修了制作展が幕を下ろしました。
今年は7名の学部生と3人の大学院生(内2人はジュエリーコースからの進学)が、1年間を掛け各自のテーマに沿って研究を進めてきました。
会場にて御覧頂くことが出来なかった皆さんにも是非学生達の頑張りを感じて頂きたいことと、頑張った学生達への餞(はなむけ)と私自身の振り返りとして、まとめておきたいと思います。もしお時間が許せば最後までお付き合い下さい。

岩崎希美:コモレビの巣


振り返ると…彼女は最も担当教員達をハラハラさせてくれた学生のひとり。彼女の中では一貫していたのかも知れないが、レビューする度にテーマや立ち位置が拡散していく感覚を覚えた。
最終的には、スマホに代表される常時接続感と溢れる情報に囲まれた今の生活に危機感を持ち、物理的なパーソナルスペースと仮想的なパーソナルスペースの在り方について考え、彼女なりの「モノ」に落とし込んだ。
当初、彼女は「20代の私が発信出来るプロダクト」を意識し、等身大の生活に潜むテーマの焙り出しを目的に、毎週毎に様々な「○○が無い暮らし」をスタートさせた。「○○」の代わりに前時代に戻る代用品や、無くても工夫すれば何とかなることが見えてくると…必ずしも「モノ」に依存しなくても成立する「生活」の中で、次第に「便利」と引き換えに手放してしまった穏やかな時間の大切さを意識し始めたのではないかと思う。「何もしないこと」を助けるプロダクト…という「カタチ」にするには少々やっかいなテーマに辿り着いた。穏やかな時間を妨げる過度な情報量がもたらす「錯覚」という「現実と認識のズレ」に興味を持ち、様々な事例とその要因を分類分けするところからスタートした。IT情報機器の存在で人と人との距離感が変わるにつれて、心地良い物理的なパーソナルスペースの変化、精神的なパーソナルスペースの変化、SNS(仮想空間)に於けるパーソナルスペースの定義、「おひとりさま」ビジネスの背景にある若い世代のマインドセットなどを分析したコンセプトスタディーは面白かった。
理屈はともかく、雛人形の巨大ボンボリの様な彼女の作品は、中に入った際、もたれるのに心地良い角度の柱の上に、肩、頭の高さにゆったりした空間が広がり、天窓に向かって収束するユニークでありながら、意外と(失礼)人間工学的で合目的なカタチとなった。中に入ると、肩から上は強化和紙で目隠しされ、紙越しに入ってくる外光を穏やかに拡散してくれる。肩から下は素通しの為、外の気配を感じることで、閉塞感無く適度に外界をシャットアウトできる実に心地良い空間となった。天窓に施した透かし模様が床の中央付近に影を落とし、紙、白木の素材感と合わせ、和の雰囲気を感じさせる世界観を備えている。本人によると「鳥の巣」をイメージした造形と素材とのこと。過度な情報をもたらす「web」が、「蜘蛛の巣」で獲物を捕らえるためのトラップだとすると、「鳥の巣」は「nest」。命を育み、これから巣立つ為の充電をする場所がモチーフになっているのは納得出来るメタファーだ。作品は「展示後譲り受けたい」という申し出が複数あり、多くの共感を得た様だ。当初の計画から素材や構造が(作業を進めながら)どんどん変わっていった経緯は…良く言えばフレキシブルだが、次の日には計画が変わり、目指すモノが2転3転するプロセスは心臓に良くなかった。当初、透かし彫りのMDFで仕上げようとしていたシェード部を強化和紙に変更したのは、怪我の功名というか…結果オーライな心変わりだった。天窓の格子柄パーツは精度が出ずに残念だった。
最後の最後まで木工を中心とした工房での作業に「間に合わない、間に合わない…」を繰り返す毎日だったが、彼女はいつも明るく笑顔で乗り切る強さも持っていた。「テヘッ」キャラの彼女は、身振り手振りが活発で、じっとして喋れないユニークな体質だが、その明るさにみんなが救われていたと思う。

加藤香奈:マルマル


JIDA努力賞、おめでとう。
年度の最初に卒制の研究テーマを発表するプレゼンテーションを実施するが、彼女の研究テーマは「一生、引きこもれる室内テント」。「いっ…一生引きこもるの?…」前述の岩崎といい、学生のみんなは、そんなに煩わしい毎日を生き、ストレスに苛まれ、逃げ出したくて、ひとりになりたくて大変な思いをしているのか…と思いたくなる様なプレゼンが続いた。確かに何もせずにゴロゴロするのは気持ちいいけどね…。中間審査の時には「心も体も安らぐベッド」にテーマが変わり、少し安心。天蓋付きベッドや、アルニオのボールチェア、モンゴルのゲルの様なテントや蓑虫の様に袋に入ってぶら下がる寝袋の様な提案まで色々な形態を模索したが、最終的には、心が落ち着く空間の研究の中で、体内環境を取り上げた。身体を丸めて自分の体積を小さくすることが安心感や落ち着きに繋がり、程良い凹型の受け皿が小さくなった身体を包む様にホールドしてくれる寝心地は、確かに気持ちが良い。余り激しくスイングするのは気持ちが悪くなりそうだが、「マルマル」は底部がラウンドしており、姿勢を変える時に適度に揺りかご効果が得られる。説明パネルの画像(本人)の様に丸まって中心部に小さくなる姿は、花の形を模した造形と相まって、御伽噺のワンシーンの様な微笑ましさを感じる。実際に寝転んでみると、身長が175cmの筆者でも安定的に乗ることが可能で、花びらのひとつに頭を乗せる角度で仰向けになると、頭の両側の花びらが肩をサポートし、残りの2つの花びらが太腿の裏側をサポートしてくれる。この感覚を体験すると、単に可愛くて花のカタチにした訳ではないことが理解できる。足を投げ出し床に付け、寝転ぶだけでも凹型が適度に身体をホールドしてくれるので、なかなかの寝心地である。クッションは硬さ(軟らかさ)が座り心地の大切な要因となり、凝った作りになると部位によって硬さを使い分け体圧分布をコントロールするものも多いが、マルマルは比較的硬めのウレタンを使用しているため、不必要に身体が沈み込むことが無く、揺りカゴの様に揺れてもしっかりしたホールド感を得ることができる良いバランスに仕上がったと思う。表皮はトリコットスエード調の柔らかな肌触りに、穏やかで優しいベージュをセレクト。狙いに対する表現としても妥当性を感じさせ、作品の理解を助ける良いチョイスだと思う。惜しむらくは、スイングする為の台座…合板を格子状に組み、床に直交するエッジをラウンド形状に削り転がる動きを持たせたが、合板に沿った向きと沿わない向きでスイングするフィーリングが異なる「転がりムラ」の様な現象が起きた。工作作業は難しくなるが、放射線状に合板を組み、同心円状に補強する構成の方が「転がりムラ」が少なく、また上屋の花びらの形状とのマッチングも良かったのではないかと思う。また、クッションを天板に位置決めする為に、天板上の5カ所に唇型の突起パーツを設けてあるが、この唇型の両端をシャープにすると強度的にも弱く危害感も出るためR処理を施した。合板はステイン仕上げ、ベースの天板には明るいピンクのカットパイルを敷いた為、このR処理の部分でここだけピンクのカーペットが露出することとなり、遠目で見た時の花びら型のシルエットにはノイズとなった。カーペットの色をステインに合わせたダークなものにするか、一回り台座を小振りに設計し、花びらの下に隠してしまうディテールでも良かった。
花びらのひとつひとつと中心の円形はずれない様に嵌められてはいるが、固定されてはいない為、それぞれを取り出し、クッションや椅子として自由に使用できる。いつも穏やかな性格の彼女らしい優しい作品を見ていると、人柄と作風(世界観)にはやはり切っても切れない関係があり、彼女の個性が魅力的に…文字通り「花開いた」作品になったと思う。筆者も含めて…展示では本当に沢山の人が実際に寝転んでみて「欲しい…」と思わせたのでは無いかと感じた。

神林さやか:指道具


JIDA優秀賞、コース論文賞、おめでとう。
彼女は、ロジカルな思考がしっかりしていて、コンセプト作りの視点やアプローチがユニークな学生だ。最初に驚いたのは、2年生の課題で学外のコンペにチャレンジするプロジェクトを進めた際、彼女は飄々と国際コンペで3位を獲得し、早くからコンセプト、アイデアやその表現に於いて頭角を表していたこと。3年生の課題で取り組んだ「引っ掛ける」というワードから展開したプロダクトでは、木材の持つ「しなり」や「しなやかさ」を巧みに利用したハンガーを考案した。普段は短冊が並んだ壁面の一部が、モノを掛ける時に短冊のひとつが弓の様にしなり荷物をホールドする仕組みで、自然のテンションの美しさと従来のハンガーの姿に縛られない「モノ」のカタチを見せてくれた。今回の作品は、この時の経験が自分の中でしっくりきた実感を反芻する様に「動作」が持つ「言葉」に早くから注目し、何百もある動詞を片っ端から検証/分類し、人の所作とデザイン(カタチ)との関係を考えることからスタートした。今やスマホで…指一本で様々なことをコントロールできる時代。器用も不器用も関係の無く望む結果を手に入れることができる有り難い時代であるが、反面、それらは本来の指の繊細で感受性豊かな感覚を排除し、単なる操作の道具に成り下がることだと彼女は考える。手や指の機能を「運動器官」「感覚器官」「伝達器官」の側面から考察し、それらを切り離さず複合的に使うことで、より多くの情報をモノから得たり、より繊細に制御できる様になる表現手段としての「手(指)の復権」が彼女の大切なメッセージである。レポートでは、解剖学的な手の機能や動き、文学的な比喩で使用される手の持つ表現力の豊かさにまで言及し、手の本質を見出そうとした内容が展開され読み応えがあった。リサーチした膨大な情報を整理し考え方を組み立てていく上で、自分の考えやアイデアを文章としてまとめておくことは、その後のパネル制作やプレゼンテーション時にも有効であると考え、今年度初めて、卒業制作に加え論文を課題として課した。苦労した学生も多かった様だが、彼女の設定したテーマ、着想、考察と文章力を見て、ささやかだがコース内で「論文賞」を設け、彼女に授与することとした。
さて、作品では様々な道具を使う「指」にフォーカスし、「運動」「感覚」「伝達」を総合的に捉える手段として、指の先にダイレクトにサックとして嵌めることで対象物と指の間にある道具をミニマム化することを試みた。
ハサミのミニマム化では、ジャンケンの「チョキ」のカタチで、ダイレクトに指で紙を切る行為に繋げ、感覚器官としてのフィードバックによって、より繊細に切りたい形状を伝達できないかという試みとなり、スティック糊では、指で紙を挟むことで台が無くとも安定的に糊付けができる利便性を実現している。描くという行為では、子供の頃に蝋石を使い道路に自由に落書きした体験を彷彿させ、測る行為では、人のスケールを意識することで「モノのサイズ」をより身近な存在に変えてくれる。
検証というプロセスを得ることが出来なかった点は残念だが、身近な道具の中に「指の復権」を試み、子供から大人まで楽しめる…ハンディキャップを持つユーザーにもひとつの可能性を提示したアイデアは、ユニークだが共感出来る。筆者はデザインを提示する上で「世界観」がとても重要と考えているが、展示の方法も彼女らしいオリジナリティーのある垂れ幕の様なグラフィックで独自性を出してくれた。

玉置みづほ:センチメモア


卒展の最終日前に当たる2月23日に実施されたJIDA(日本工業デザイン協会)中部ブロックの次世代育成事業による卒制訪問での彼女のプレゼンは中々良かった。普段の「あ〜もうだめだ〜」的な悲壮な姿からは想像出来ないくらい、しっかりと自分のアイデアを伝える姿は頼もしかった。彼女は当初から、水やアクリルを使った透明感のある表現や素材に興味があり、一方で「花言葉」によるメッセージを使ったギフトに興味を持っていた。
商品の購入動機として「機能」「価格」といった【理性】と、「見た目」「感情」といった【情緒】のバランスが作用しているとし、「理性と情緒のバランスで人はモノを買う」という仮説の中で、「人のためにモノを買う」場面に於ける【情緒】として「贈り手の想いや気持ち」をしっかり伝えることの大切さを訴えたいと感じていた様だ。ダイレクトに伝えることが苦手な日本人の「照れ」「遠慮」「慎み深さ」などと絡め、贈って直ぐでは無く一定時間を経て相手に真意が届く「タイムラグ」によるギフトの演出を模索した。「贈り手の想いが相手に届くまでの時間を楽しむ」という体験が双方にとっての価値となり、「メッセージを発見した時の驚きや喜び」が、受け手にとっての付加価値になる様なコミュニケーションとしての視点からギフトを考察している。件(くだん)のプレゼンで感心したのは、説明の中での「きちんと言葉で相手に想いを伝えることが大切な時代…云々、○○であるべきだと思う」といった一連の台詞。一般的には「こういうことを調べたら、こんなことが分かったので、この様にした」というプレゼンが多い。これは…作者の個人的な意見では無く客観的なエビデンスがあるぞ…というアピールであり提案に説得力を持たせる手段でもある。確かにリサーチの末に得た答えではあり、視点や切り口にはオリジナリティがあるかも知れないが、リサーチの結果と対策はオートマチックにひとつの答えが導き出されるものでは無く、そこには多くの選択肢や可能性がある。何故それを選択したのか…には「ビジョン」が必要で、彼女は「○○であることが、望ましい社会であり、そうあるべきだと考えている」ことを自分の「ビジョン」として口にした。その口調は、プレゼン時の手の振るえとは裏腹に、実に頼もしく、実にカッコ良かった。


話が逸れたが、作品は花キューピット式に、贈り手が花言葉に込めた想いから花を選びメッセージと合わせ申し込む。受け手は、水溶紙に包まれたギフトに水を入れ24時間待つと選ばれた花が姿を現し、合わせて届けられたQRコードからメッセージを受け取る…というビジネスモデルの提案とも言える。当初の「水やガラスの透明感」を死守し、紆余曲折はあったものの「美しさ」を彼女の世界観なりに表現できたと思う。筒型の形状やサイズ感、中に入れる花のデフォルメと表現手法、タイムラグを生む為のアイデアや素材の模索など、シンプルなアウトプットの中にも、ちゃんと多くのトライ&エラーが詰め込まれている。中でも、美術館では展示に「水」を使用することが許されていない為、展示の方法については苦労した。最終的には透明レジンで固め、水のレンズ効果に近いモノを再現したが、搬入の間際の間際まで失敗を繰り返し、教員をハラハラさせてくれた。試行錯誤の末に辿り着いた、細いワイヤーにマニキュアの膜を張る花の表現は実に繊細で工芸品としても見応えがある。LEDの照明を入れるアイデアはインテリアとしての飾る魅力を増し、断面がグリーンに見える透明アクリルを使った天板のレイアウトなどにも拘り、彼女の世界観を堪能させてくれた。冒頭の岩崎と並んで、教員達を最後までスリル満点の境地に追い込んだ犯人のひとりである。

西尾和真:見る、ミル


桃美会賞、JIDA最優秀賞、おめでとう。
4年前のオープンキャンパスで彼と始めて出会った時、車が好きだ…という話をしてくれた。実際に車の知識も豊富で、好きな車についての講釈も持っていた。筆者は自動車メーカー出身なので「車好き」と聞いただけで肩入れしてしまう傾向を否めないが、彼の魅力は「好きなことに対する知識の豊富さ」だ。今回は、コーヒーという彼を虜にした…もうひとつのお話。デザインを進めるプロジェクトチームの中で、そのプロジェクトに一番詳しいのは誰か?正解のひとつは「担当者」だ。勿論、統括するマネージャーは全体を把握し、関連する情報量も多いが、大局的にプロジェクトを推進していくための判断をすることが使命であり、担当者の持つ情報とは詳細の種類が異なる。設計者とミリ単位でカタチの攻防戦を繰り広げているのは担当者であり、問題の原因、制約、解決手段のオプションは担当者の手の内にある。問題無くデザインの主張が通っていく調整を手際良く担当者が行えば、問題点はマネージャーの所まで上がって来ないことさえある。4年生には教員を4人充てているが、それぞれに専門分野もキャリアも異なる。お陰で広い視野で学生の選んだテーマを捉えることが出来ると考えているが、当然、自分の専門分野では無い場合もある。経験と知識から最善と考える助言や情報を伝えるが、専門分野では無いテーマの場合は教員もまた一緒に学びながら課題を進めていくことも必要となる。是非、学生には「教員は生きてきた年数分だけ色々なことを知っているかも知れないが、こと今回の○○に関しては、これだけ調べた自分の方が詳しいはずだ。反論するならしてみろ」くらいの意気込みで向かってきて欲しい。普段から優しいキャラクターの彼の強さは、この好きなことに対するエネルギーの掛け方が半端ないこと。こちらが疑問に感じることについては、リサーチの成果として殆どのことに自分なりの回答を持っていると感じさせる信頼感があった。今回、取り組んだコーヒーミルについても、論文に詳細をまとめてくれたが、「好きなのね…」とコーヒーに嫉妬する程に入れあげる様子が伝わってくる。


さて作品は、プラネタリーギアと呼ばれる変速ギアを用いることで短時間で手挽きによる効率的なミリングを実現するミルの提案。従来のミリングの歯の仕組みが持つメリット、デメリットを分析し、新たな機構をビジュアルにも活かし、その存在が、ただ豆を挽く道具から一緒に時間を過ごすパートナー達とのコミュニケーションツールとして機能するところまでをイメージしている。中心のギアの周りを遊星ギアが自転しながら回転する動きは見ていても美しく、隙間をコントロールすることで粒度の調整をする仕組みもフォローしている。論文では、最終の提案に繋がる物語部分にもっと丁寧な追い込みが欲しかったが、色々な機器の解体、コンセプトの広がり、アイデアスケッチ、原理モデル、機構モデル、サイズ検証モデル、材料検討、展示計画…どれを取っても相当な物量をこなし、拘りを見せてくれた点を高く評価した。最終モデルでは、本当にこれで豆がイメージ通りに挽けるのか、また商品としての「美しさ」にまで辿り着けたか…という疑問は残ったが「研究」としての取り組みという点では、この1年間の頑張りは2つの賞を持って行くに値するものだったと感じる。(彼と一緒にモビリティーを研究する夢は叶わなかったが、クルマの変速機にも使われているプラネタリーギアも出てきたので許すことにしよう)
彼もまた、日程管理を含めた自己管理がしっかりできた学生の1人で、卒展の搬入時には自分の荷物の開梱を後回しに全体のセッティングに走り回り、最後は隣のコースの照明の調整までやってのけた。「余力を持って全体を見る」ことは時間的な余裕だけでは無く、気配りや周囲への配慮といった気持ちの持ち方に拠ることが多く、出来そうで難しい能力であり、社会に出てからも可愛がられる素養のひとつである。いつまでも、その優しい心根を維持して欲しい。

野呂翔子:旬ぐらし材料室


コース優秀賞、おめでとう。
「疑わしきは、はみ出せ」私が企業に就職した頃に尊敬するチームリーダーに言われた言葉。「新しいことを思い付いたが、これは自分の職制とは少し違う…自分がやるべきかどうかグレーゾーンだ…そう思ったら、迷わずお前がやれ! それがお前の知見を広げプレゼンスを上げる。大変かも知れないが、そこで得た経験は会社では無く、お前のものだ」と言われた。今やデザインの分野を明快に線引きすることは出来ず、様々な技術やトレンド、分野を総合的に横断しながら、大いにはみ出していくことが活路を開く大切な視点である。彼女のアウトプットは、プロダクトデザインの分野から見ると物足りなさを感じるかも知れない。物理的な立体としての商材とは言えず、スタイリングや機能を検証出来る商品でも無い「ビジネスモデル」の提案であり、ブランディングのベースとなるコンセプトの提示だと言える。作品は一言で言うと「(本当に美味しい)野菜を食べていない人に「旬野菜」を食べるキッカケを提供する為の実験室」…といったところか。個人的には「野菜のDIY」という彼女の言葉が分かりやすく気に入った。ユーザーが取りたい野菜からメニューを模索し、自らが調理し、カトラリーや食器を選び、その場で食べることができるセルフサービス型レストランという仕組みで、その季節の旬の野菜を知ってもらい、味を堪能してもらうことで本当の野菜の美味しさを伝えたい…素晴らしアイデアだ。レビューの中では、レシピや創作料理をSNSに乗せるなど、新しい野菜の訴求方法にも目が向けられていた。実家が農家であることを今回の卒業制作で初めて知ったが、ひとり暮らしを始めるまで実家の美味しい野菜しか食べてこなかった作者が、ひとり暮らしを始めて、スーパーで買う野菜の味の違いに驚いたという実体験からスタートしている。彼女の論文は(筆者にとって)実に勉強になった。農業に対するイメージや考え方も変わり、彼女がリサーチした内容の面白さ、自分の農業に対する考え方、まとめの上手さなど素晴らしかった。「旬で食べる」ことが少なくなった背景には、季節を問わず豊富に野菜を収穫することが出来る技術や化学肥料などの存在が想像出来るが、必ずしも化学肥料を用いた農法が妥協の産物な訳でも無く、「有機農法」や「無農薬栽培」といった手法が無条件に素晴らしい訳でも無いこと、そして「手間が掛かり高価」「作り手が少なく高価」といったイメージによる先入観もまた間違いであることを知ることができた。従来のプロダクトの路線をはみ出そうとする彼女の取り組みは魅力的だった。
最終審査の後に行った「桃美会賞」を決める担当教員達との協議の中で、最後まで上段の西尾と迷った。昨年度も加藤愛理が「ゆるふわタウン」というビジネスモデルの提案を行ったが、加藤の場合は街並みのデザインからキャラクターのフィギュアデザイン、SNS用のスタンプやプロモーションビデオまですべてをオリジナルの創作物でまとめたのに対し、野呂の作品は本人のプレゼンテーションでも語られた通り、コーディネーションの範囲に留まった点で、最終的には西尾に軍配を上げる結果となった。中間審査の時には、野菜のカタチを模した立体的なメニューが提示され、面白くなる予感を感じさせたが、グラフィック的なアイテムのまとめに腐心する中で、以降のプロダクトアイテムへの展開には手が回らなかったと感じた。
彼女の素晴らしい点は、圧倒的な自己管理能力とグラフィックセンスを含めた表現力、ストイックに自分の目指す方向を見据えた行動力、今回課した論文にもみられた筆力…など数え切れない。こういう…放っておいてもきちんと出来る学生は、ある意味、手が掛からず楽…だが、反面、彼女の仕事振りに甘えていたかも知れない。経過報告での進捗と黙々と作業をこなす姿に安堵した点で、申し訳ないことをしたと反省。どういう落とし所に持って行くべきかが難しいテーマにチャレンジしたが、展示ではその場所の世界観を共有するアイデア、空間を意識したレイアウト、映像を取り入れた表現などが面白かった。

林将輝:コドモのツクエ


全体ビデオの編集、御苦労様。コースの紹介ビデオ以来、動画は林君…の様な暗黙知で、彼に負担が掛かってしまったが、最終審査や搬入の様子など直前の映像まで混ぜて編集をしてくれたことで、この1年間を振り返ることができた。
さて、今回の彼の作品は、その見せ方のユニークさに大きなポイントがある。作品自体は、子供の視線で見える世界と大人のそれを対比させ、テーブルの上を「大人の世界」、テーブルの下を「子供の世界」と定義し、子供の目の高さでくり広げられる日常を冒険心たっぷりに切り出そうという試み。テーブルとしての機能は、この際少し優先度を下げ、(おそらく誰もが持っている)4本足のテーブルの下に入り込んだ経験を思い出して頂こう。テーブルの下が居心地の良い自分だけの空間だったことにワクワクした記憶をお持ちの方もいるだろう。空想の基地であり、落ち着く砦だったテーブルの下には枝の様な造形が広がり、森の中を探検するトム・ソーヤの気分だ。木漏れ日を想定し、天板の一部には穴が空けられている。展示では、大人目線では、テーブルの下に潜り込むことが出来ない為、彼はひとまわり大きな箱を設置し、テーブル下からの点光源で、箱の内側にテーブル下の世界を影として映しだした。身長の高い人には少し屈む姿勢を強要するが、あたかも子供に戻ってテーブルの下に入り込んだ気分にさせてくれる演出にやられた。テーブルのカタチそのものがプロダクトデザインで言うところの成果物だが、彼のアイデアは、その見せ方の重要性を教えてくれる。木の枝にぶら下がったフォークやぬいぐるみの影を発見した時に、思わず「どうなっているのか?」とテーブルの下を覗き込んでしまう自分に少し嬉しくなる。木の枝をモチーフにするならば、従来の四角に縛られず自由な形状をテーブルに与えても良かったのでは…とのコメントも出たが、影を映す箱の中がテーブルの下を模していることを明快にするには、四角の方が良かったのかも知れない。箱の四隅に丁度テーブルの脚の影が映る様に縦横比を合わせ、見学者の「視点」を操る面白い仕掛けが完成した。
彼は当初、現状の「子供向け商品」に対する疑問からスタートし、家具に展開したいという思いはブレずに進めることができたが、当初は「子供向け商品も大人が作っている…真に子供目線(欲求)で作られたものが無い」という根拠が曖昧で検証が難しい仮説を立て、問題点をどう捉え、どう展開していくのか見え辛い時期が続いた。幼稚園にリサーチに行くものの、林君の視点と作為が入った瞬間に、やはりそれは「真の子供の欲求」で作られたものになるのかどうかが分からなくなる自己撞着が起こるためで、子供自身がデザイン、設計することが出来ない以上、何を以て「真の子供目線」と定義するかの焦点が定まらず苦労した。ある時、自身の子供の頃の体験から、テーブルや椅子の下に潜り込んだ時に見た天板や座面の裏の始末が安っぽく落胆した記憶を根拠に、子供をガッカリさせない「裏側の世界」に糸口を見つけた様だ。そこから発展し「裏側」では無く「子供にとっての表側」を意識することで、付加価値になり得るヒントを探り当てた。裏側を綺麗に仕上げるだけならコストを掛ければ実現するが、問題解決では無く問題提起として、それに見合う付加価値を子供の目線から見出した…文字通り「着眼点」に感心した。子供が「ごっこ」を経験する舞台装置としては贅沢な設えだ。一緒に遊ぶハックルベリーも見つかるに違いない。JIDAのイベントで色々な美術系大学の卒展を回っていると、最近、子ども向けの家具や玩具、衣類などに興味を持つ学生が目に付く。少子化の中、子どもに対する愛おしさや大切にしたい…そんな思いが強い時代なのか、誰もが経験した子ども時代を振り返りたくなる程に大変な毎日を実感しているのかは別にして、彼の穏やかで優しいキャラクターらしい、童心に返ることができる素敵な作品だった。

堀田蒼:DESSIN


彼は学部の卒業制作展でも白黒専用のカメラを提案した。例年、実施しているJIDAの卒展訪問時のプレゼンでは、前回の作品(その作品で彼はJIDAの最優秀賞を受賞)を覚えている方もおられた。普段は寡黙だが、熱心で真面目なキャラクターで、コツコツ丁寧な仕事をする。スケッチテクニックもレベルが高く、工業デザインの王道を行く学生だ。学部でやり残したテーマを継続して研究したいとの想いで大学院進学を決め、公約通りモノクロ専用カメラ「DESSIN Ⅱ」とも言うべき作品に取り組んだ。「DESSIN Ⅰ」が、直線を基調としたクールなボディデザインであったのに対し、今回はやや丸味を帯びた優しいスタイルに変化した。2年の時間が流れ、彼の思うところにも変化があったのかも知れないが、前回の無機質でメカニカルなイメージによるマニアックなユーザーの心をくすぐる意匠に対して、緩やかなカーブや張りのある面処理は洗練度が上がり、よりユーザーの間口を広げるデザインに生まれ変わった。その点では、前回はややハイスタイルに目が行きがちな提案であったが、今回は、このカメラを使用した表現のバリエーションや楽しみ方にも言及し、ライフスタイルの提案にまで研究の幅を拡げた点に、その進化を感じる。「モノからコト」と言われ久しいが、商品を通して得ることが出来る体験に価値を見出すアプローチは益々大切になる。

2年前の卒制作品「DESSIN」2016年度

ひとつ目のポイントは「出力」。最近は誰でもカメラを持ち歩く(スマホに付いている)時代、画像は撮り溜めていくばかりで、出力する機会もないまま「いつでも全てを持ち歩き、見たい時に見る」或いは○○映えを意図し「SNSにアップする」ことが画像の楽しみ方。彼は、敢えて物理的な紙媒体…ロールの印画紙に連続で出力できることを前提に、レビューのライトテーブルモードで画像の順番を入れ替える機能を想定した。撮り溜めたデータの順番を編集する機能は、既存の商品でも、ありそうで無いものだ。順番を変えることでストーリーが変わり、その組み立て自体も撮影者の表現の一部に取り入れる試みである。プリンターをコンパクトに収める為に採用したのが医療用感熱紙。MR検査などに使用される感熱紙はラティチュード(明暗の表現幅)が広く、感熱温度が高いため、常温保管でも焼けてくることが無い特性を持っている。一連の流れを物語の様に表現することはモニター画面では難しく、新しい表現のひとつになるかも知れない。2つ目のポイントは、専用のギャラリーサイトによる、作品の展示システム。ピンタレストやインスタグラムは、もはや画像共有の標準言語と化しているが、SNSを活用したモノクローム専用のギャラリーによる作品を集めた情報共有システムにより、モノクローム写真で難しい各種パラメータやフィルターワークの情報を交換・共有できるスキルアップの側面もカバーしている。3つ目は、インターフェース。いくつものパラメータをより直感的に把握しやすい様に、各数値をグラフの様な図形で表示することで、数値のバランスをビジュアルで感じさせる試み。数値の羅列よりもイメージとして把握する方が有効性が高いのではないかという仮説に基づく。モニターやファインダーもモノクローム表示される前提で、ファインダーを覗かない方の裸眼で実際の景色を確認出来る様に上部がカットアウェイされたスタイルは「DESSIN Ⅰ」から引き継がれた。「インスタ映え」が2017年の流行語大賞となったが、私たちは毎日の暮らしの中で…友人に共感してもらうことを目的に景色を四角く切り取る視点で日常を見る時代になった。表現のひとつとして様々な加工が出来るアプリなども人気だが、色の情報を取り除くことで見えてくるシンプルな世界やダイナミズム、想像力を掻き立てられるワクワク感は改めて写真の魅力として若い世代にも人気が出そうだ。彼らにとって白黒はレトロでは無く新鮮な表現手段に見えているのかも知れない。

展示期間が終了し、来場者もいなくなった会場にて

彼らのモチベーションは、一体何だろう?
「やりたい」からやるのか「やらなくてはいけない」からやるのか…。「自分はこの程度だと思われたくない」という見栄が原動力になることもある。「欲」であれ「義務」であれ「見栄」であれ、学生のテンションは見かけからは分かりづらい時もある。「やらなくてはいけない」から?…と感じるのは、時折直面する「諦めの良さ」。良く言えばフレキシブル、多様な考えに寄り添っていけるとも言えるが、これで無いとダメだという思いは、確信が持ちにくい時代には、難しいマインドなのか? 単に時間の管理が上手く行かずに妥協せざるを得ないのか?
誰しも「失敗」は望まない。「失敗」は時間と予算を圧迫することに直結する為、せずに済むなら避けて通りたい…という思いと「研究」という探求行為とは相容れない。大学は研究機関であり、自分のアイデアを打ち砕かれてこそ経験値が上がっていく。またそれが大いに許され…推奨される現場でありたい。その為にも余裕のある日程管理が必要で効率的な作業が求められる。消耗品が多い美大生にはバイトの時間も必要で大変だとは思うが、資材の調達や不測の事態への備え、バックアップできる時間や善後策など、総合的にプロジェクトを管理する絶好のチャンスでもある。帳尻を合わせて出来れば良いのでは無い…もちろんアウトプットとしての制作物も大切だが、このセルフマネージメントを学んでいると実感することができれば、彼らはもっと強くなれる。

散らかったアトリエも学生がいる間は活気に満ちて、ひとつのゴミも人が生きている証に見えたが、搬入が終わり学生の姿の無いアトリエは、ただのゴミ屋敷。楽しいことも苦しいことも共有してきたであろう学生達がそこにいた…と思うだけで、もう4年生ロス症候群が始まりかける。本学に着任して丸5年になるが、この5年間で最もスケジュールが遅延した学年だった分、強く印象に残る学年でもあった。
3月1日、今日は青空が広がる春らしい穏やかで気持ちの良い一日。彼らの卒業式の日も今日の様な気持ちの良い晴天であることを心から祈っている。

プロダクトデザイン 金澤

こだわるかぐ展

名古屋造形大学 後期企画展のお知らせ


デザイナーは何に「こだわる」のか?
今回は、私、鈴木の専門分野でもある家具から8つの「こだわる」キーワードをピックアップしました。

形(カタチ) 積(つむ) 折(おる) 曲(まげる) 繋(つなぐ) 跳(はねる) 撓(しなる) 縫(ぬう)

8つのキーワードは構造、素材などのアプローチから実験的な「こだわり」を試みています。
「こだわる」ことで見えてくるデザイナーの意志を座って楽しんで頂きながらご高覧ください。
お立ち寄りの際は、お気軽に研究室までお声がけください。

「こだわるかぐ展」
会期:2018年11月19日(月)〜30日(金) 9:00〜18:00(最終日17:00)
場所:D-1ギャラリー(名古屋造形大学 管理棟1F)

ライフデザインコース 鈴木

「四時」の活動を御紹介します!

こんにちは。助手です。

今日は、本学プロダクトデザインコース(現ライフデザインコース)4年生西尾くん、ジュエリーデザインコース4年生廣田さんによるユニット「四時」(しいじ)についてご紹介します。

 

「四時」は陶器や真鍮を素材にしたアクセサリーやカップ&ソーサー、お皿などを中心にデザインから制作・販売まで2人で行うユニット。

 

 

真鍮を素材としたアクセサリーはジュエリーデザインコースの廣田さんが、陶器のアクセサリーや食器はプロダクトデザインコースの西尾くんが制作しているそうです。

 

 

岐阜市にある柳ヶ瀬商店街で毎月第3日曜日に開催される「サンデービルヂングマーケット」や、名古屋造形大学芸術祭などに出店しています。

名刺やタグ、お店で使用するディスプレイ用の台など、細部まで二人の美意識が行き届いています。

 

 

直近では10月6日(土)〜8日(月)開催の名古屋造形大学芸術祭に出店予定、
http://www.nzu.ac.jp/~artfes/

次回10月21日(日)開催のサンデービルヂングマーケットにも出店が決まったそうです。
http://ysbmkt.com/

 

そんな「四時」の活動が、この度「岐阜本 最新版」にて紹介されました。

 

 

59ページ目の左下です!

 

 

「岐阜本 最新版」は、エイ出版社より9月26日発売です。

岐阜本 最新版 (2018.9.26発売)
¥999(税込)
雑誌コード|62416-09
ISBNコード|978-4-7779-5280-9

 

四時
Twitter: siji_yoji
Instagram:siji_yoji

デザイン女子 No.1 続報!

2日目は、部門賞のプレゼンテーションと審議です。

昨日「特別賞」に輝いた関谷さんは、強豪揃いの力作の中、ファイナリストに残り、見事「No.2」に輝きました! パチパチパチ。

No2 の文字が誇らしい…この1年間、ずっと見てきたせいか、ホントにこの商品がある様な気がしてきた

建築・インテリア・プロダクトの異種格闘技戦さながらの激戦の末、彼女の4年間の集大成として取り組んだ「neiro」は多くの人に見てもらうことができ、たくさんのコメントや共感を得たようです。
No.1 は、インテリア分野の作品ですので、実質プロダクトのトップと呼んで良いと思います。

審査修了後。出し切った…伝えたいことは伝えたので悔いは無い…とのコメント。 とても素敵な笑顔!

大学生活の締めくくりとして素晴らしい成果だと思います。本当に最後までよく頑張った!
おめでとう (ToT)/

PD 改め LD(ライフデザイン)金澤

デザイン女子No.1で、またまた快挙!

おひさしぶりです!

今や、デザ女の常連校となっている名古屋造形大学のプロダクトデザイン(今年からライフデザイン)。
毎年、卒制の中からエントリーしていますが、今年は関谷祥子さんの「neiro」が、見事特別賞を受賞!
ファイナリストは、彼女以外、全員建築部門…てことはなにか…プロダクト部門でトップってことぢゃない?!

「neiro」については、前回のブログ「卒制一気レビュー」を御参照下さい

これで、昨年の永田さんの「irodori」(プロダクト部門No.1)、一昨年の加治さんの「万華筐」(オーディエンス賞)、その前々年の中間さんの「patan」(デザ女No.1)に続く、快挙です。

卒展で「neiro」は、JIDA中部ブロック最優秀賞と学内優秀賞をW受賞していますので、これで3冠ですね(^^)/
28日も部門賞のプレゼンです。 連日で大変だと思うけど、ガンバッて!!

PD…改め LD(Life Design)
金澤

デザイン女子No.1決定戦2018 スタートアップ!

いよいよデザイン女子No.1決定戦2018が、告知されました!

昨年度は、つい先日ブログでも御紹介した永田明里さんの「irodori」が、プロダクトデザイン部門の N0.1 、一昨年度は、卒業後から木工職人を目指し修行中の加治志生吏さんの「万華筐」がオーディエンス賞、2013年度には、中間彩乃さんの「Patan」が、グランプリに当たる「デザイン女子No.1」に輝いた、名古屋造形大学のプロダクトデザインコースとは、とても御縁のあるコンペティションです。

デザイン女子No1

中間彩乃さんの「Patan」

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加治志生吏さんの「万華筐」

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デザイン女子No.1 審査会場にて

 

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永田明里さんの「irodori」 左奥で立っているのが、作者の永田明里さん

各受賞作の解説はネットで御覧頂くとして、このコンペは全国の大学、短大などで建築、インテリア、プロダクトなどの空間や立体デザインを学んだ女子学生の卒業制作作品を対象としたもので、毎年100点近い応募作品の中から優れた作品に賞が与えられます。

著名なデザイナーや建築家などが審査に当たり、毎回、学生達の緊張しながらも素晴らしいプレゼンテーションを見ることができます。
今年も狙います!

名古屋造形大学のプロダクトデザイン(来年からライフデザイン)に御注目下さい!

PD 金澤

Process展の御案内

愛知県内の美大に通うプロダクトデザインを志望する4人による展示会があります。
名古屋造形大学のプロダクトデザインコース(来年からはライフデザインコース)の1年生、奥田帆南さんが参加しています。

process展

普段はあまりみることができない制作過程(プロセス)を見て、触って、感じてもらえる展示って…いったいどんな作品が並ぶのか楽しみですね!

はがき記載と同内容ですが念の為。

・会期:2018年1月10日(水)〜14日(日)10:30〜19:00(最終日17:00)

・入場:無料

・場所:市民ギャラリー矢田3階第6展示室

(地下鉄名城線ナゴヤドーム前矢田駅下車 1番出口 南へ徒歩5分)

 

彼女もそうですが、学外にネットワークを持っていると世界が広がり、アウトプットの幅も広がります。
学生の皆さんには、是非、他大学の学生やJIDA(日本工業デザイナー協会)等の学外団体、地域のネットワークや学外コンペなど、色々な社会との繋がりを持ち、活動して欲しいと思います。

若いエネルギーが発信するメッセージを是非、ご覧下さい!

 

PD 金澤

ウッドワンダーランド2017開幕

プロダクトデザインコースで取り組んでいる積層造形…立体の等ピッチの断面を起こし、各断面をレーザーで切り抜いた後、積層する造形手法…をテーマに、ウッドワンダーランド2017にエントリーしました。

ウッドワンダーランドは、木工に関する様々な展示や体験が出来るイベントで、最新の工作機械なども見ることが出来ます。
トヨタ自動車の木製のロードスターやカリモクさんの木琴の板が並んだ音の出るオブジェなど、私も楽しみにしている作品が並びます。

今回は、2年生が展示計画から展示モデルの制作、解説用パネルなどを作ってくれました。
今日は4名の学生達を連れて、いざ搬入。

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3mx3mの小さなブースですが、現在3年生が取り組んでいる素組のモデルや同じ工程で作ったクルマのモデル、過去の椅子など幾つかの木工作品を選びましたので、お時間のある方は、是非ポートメッセなごやまでお出かけ下さい!

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搬入で頑張ってくれた、向かって左から、彦坂君、中島君、久保さん、三谷さん。

PD 金澤