3Dプリンター奮闘記

昨年の10月からsantec株式会社様からお借りしていたスキャナー一体型3Dプリンター「ZEUS」!

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この1年間、私達は3Dプリンターの操作性、実用性、活用法を知ることを通して、最近の「ものづくりの手法」を体験してきました。
精度を求めるモデリング、或いは形状やサイズの検証を繰り返しながらデザインの精度を高めていくモデリングには、従来は多くの時間と手間が必要でしたが、3Dプリンターによるモデリング作業では、データによる立体情報の一元化とチューニングしていくことによる履歴を残した確実なリファイン、モデリングを機械が進めている間に更なる検討が可能になる効率化、そして何より…思いついたカタチを気軽に直ぐに立体で確認できる即時性など、学生達のモデル制作の進め方も変わり、これに伴い学生達の発想や考え方にも変化が出てきた様に思います。
「どうやって作る?…3Dプリンターを利用すれば出来るかも…」そんな選択肢が増えたことで、従来諦めかけていた立体にチャレンジする機会は増えたに違いありません。

美術系大学が持っている工作工房は、近年「ファブリケーション・ラボ」というお洒落なネーミングと共にその機能も変化しつつあります。 プロダクトデザインを学ぶ私達に求められているものも「工作技術」ではありません。(もちろん技術が高いに越したことはありませんが)腕の良いクラフトマンを育てることが目的では無く、リサーチ作業や思考作業、議論を重ねたり、仮説を検証する作業に、より多くの時間を割くことが重要と考えています。

アメリカではオバマ政権下の2012年に、今後4年間で1000カ所の学校に3Dプリンターやレーザー加工機などの工作機械を完備した工作室を設けるプロジェクトを立ち上げました。明らかにこれらは、従来の様な技術職人に代表される様な労働者を育成する為の「工作」を学ぶものでは無く、アイデアを簡易に具現化することが新しいビジネスに結びつくことを背景とした、新世代のシステムデザイナーや製造業に於けるイノベーター育成を目的としています。「アイデア」から「プロトタイプ」までの最短化を実現するデジタルファブリケーション・ラボへの取り組みが今後益々進んでいく中で、santec株式会社様に御協力頂いた今回の産学は、学生達にとってもモデリングの意味を考える良い機会になったと感じます。

この10月末を以て産学連携としてのレポートは一旦終了しますが、課題や卒業制作に向けてまだまだ活躍しそうな予感の「ZEUS」については、学生の活躍と合わせこれからも面白いものがあれば御紹介していきます。
今回は、第1回目から「ZEUS」に非常に興味を示し、色々なトラブルを乗り越えてきてくれた水野君の作品(パーツ)のその後を少しだけ御紹介しましょう。
慣れない機械でもあり、操作のノウハウとトラブル時にどうすれば先に進めるか…を一緒になって考えてくれた水野君は、おそらく現在、造形大1「ZEUS」に詳しい学生です。

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一見、何の部品かよく分からない…相変わらずの水野君ワールドです。

出来上がりの姿が見える様になるまでには、もう少し時間が掛かりそうですが、多くの試行錯誤を繰り返した彼の作品の全貌を見る日が今から楽しみです。

to be continued…

 

PD 金澤

3Dプリンター奮闘記

久し振りの投稿です。 学生の皆さんは充実した夏休みを過ごしてくれているでしょうか?

前期はアイデア出しやスケッチも多かった課題ですが、後期になると卒業制作も含め各学年共に「ものづくり」が佳境を迎えます。

そんな中、今回、非常に嬉しい出来事がありました!
産学連携でお世話になっている地元企業の「株式会社santec」様。
現在、同社が扱っておられるスキャナー付き3Dプリンター「ZEUS」をこの9月から、もう1台お借りできることになりました!!
そして、なんと11月には以前から借用していた「ZEUS」と合わせ、この2台を名古屋造形大学に寄贈して頂ける運びとなりました!! パチパチパチッ

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研究室に2台のZEUSが並びました

なんて太っ腹な会社なの!?

導入に当たっては、営業の方には丁寧に使い方を指導して頂き、その後もメンテナンスやフィラメント(出力素材)の補充など、とてもフットワーク良く御対応頂いてきました。

今回、産学連携が終わってしまうと「せっかく操作方法も使い方のコツも判ってきたのに勿体ない…改めて導入するには予算は…」と頭を悩ませておりました。
借用していた1台については、産学連携終了後にお安く譲り受けることが出来ないか相談してみよう…そう思っていた矢先、なんと「新しくもう1台追加しましょう!」と夢の様なオファーを頂きました。

「ものづくり」を惜しみなく支援して下さる企業、若い後進育成を応援して下さるsantecさんの様な会社に支えられて私達は新しいことにトライする機会を頂いています。 改めてここで御礼申し上げると共に、せっかく与えて頂いたチャンスを有効に活用させて頂くことを約束し、恩返しさせて頂きたいと思います。

学生の皆さん、後期は制作も一層忙しくなると思います。
どんどん「ZEUS」を活用し、作品をクオリティーアップして下さい!

PD 金澤

3Dプリンター奮闘記

新年度を迎え、santecさんとの産学連携も後半戦に入ります。

前回の卒業制作展でも大活躍した「ZEUS」ですが、今回紹介するのは、少し変わった使い方かも知れません。 学生は透明のドーム型を必要とするモデルに取り組んでいます。 東急ハンズなどに行けば、既成のアクリルのボール(器)型パーツを買うことができますので、これをカットしても良いのですが、イメージにピッタリのサイズ・カーブの部品って、なかなか無いんですよね…。 学校には真空成形機がありますので、これで作ってみることにしたのですが、やはりピッタリのサイズ・曲率の母型が無い…今回は「ZEUS」を使って、この母型作りにチャレンジします。

形状はいたってシンプルな凸レンズ形状。 希望のサイズは「ZEUS」の出力範囲を超えていましたので、止む無く2ピースに分けて合体することにします。 前回までの教訓を忘れずに、凸型の頂点を出力する際、冷めない内に重ねて出力することで形状が崩れてしまうのを避ける為に、同じ高さのダミー棒を生やしておきます。

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データは、いつものShade で作成

形状がシンプルなだけに、失敗も無く出力完了。

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問題無く出力完了

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等高線の凹凸を真空成形が拾ってしまいます

2つのピースを合わせてみても、まあまあの精度で凸レンズ形状になりそうです。

繋いで磨いて母型を完成しましたが、真空成形では思いの外、表面の凹凸を敏感に拾うことが判明。 表面の磨きに相当の時間を掛けないといけないことが分かりました。 「ZEUS」はポリ乳酸系の樹脂を出力していますが、結構なサンディングにも耐え、形状をしっかり出すことも出来ることも分かりましたので、母型以外にも磨いてフィニッシュする作品でも活躍しそうです。

PD 金澤

3Dプリンター奮闘記

卒業制作も終わり、身の周りのバタバタした感じも少しは落ち着きを取り戻し始めました。
3Dプリンター奮闘記は、前回は見たことも無い状態でノズルが固まってしまい、私も一緒に固まってしまったところ…までお伝えしました。
その後、ノズルの交換後は、「ZEUS」も特に機嫌を損ねること無く、元気に働いています。 そうそう、グラフィックデザインコースの澤木くんの作品でしたね!

最初に彼が持ち込んできたのは、怪しげな図面が2枚。

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寸法追いはしてあるものの、辻褄や合わないところや形状が特定出来ない部分がチラホラ。彼と何度かの打ち合わせをして形状を特定した後、データ化しましたが、最終的にどんな作品の一部になるのか判らないままの作業です。

カップの取っ手はソリッドなものと、ワイヤフレームの様な形状の2種類です。

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3Dプリンターでは、空中に浮いた部位を垂れずに出力するために、最終的には取り外すサポートパーツを必要に応じて出力します。 このワイヤフレーム型の取っ手は、どの向きで出力するにしても、空中に浮く部分ができてしまいますが、殆どが最終的に取り外すサポート部分になりそうで、フィラメントがもったいない!…との判断から、写真の様に2つの部品に分け、空中に浮く部分が無い設定にしました。 後から接着の手間が増えますが、サポートをキレイに取り去る手間も掛かりますので、こちらの方がきっと簡単!

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とにかく、サイズが大きく出力時間が長いので、今度は異常が発生しても分かる様に朝一でスタートし1日中稼働する作戦に変更。

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お陰様で、無事に出力を終え、巨大なマグカップの出来上がりです。 出力直後に写真を取り損ねてしまいましたので、美術館で撮った作品の画像を御覧下さい。(結構、高い位置に展示してあり、見上げる様な写真になってしまいました)

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下の鏡餅みたいなモデルも「ZEUS」による出力です。

これも出力サイズを超え、半分に切った状態でデータを作ったのですが、中身が詰まった状態で出力すると、半分で450gのフィラメントを使うことが判明!

フィラメントは1kg単位で交換するのですが、2つ作ったらフィラメントがほぼ1巻無くなってしまう計算に…仕方が無いので、中空での出力に挑戦。 結果は…残念な感じ。

水平移動が大きくなる部位はサポートが無いとフィラメントの座りが悪く、隙間だらけの仕上がりに…(T^T)

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最終的には、澤木くんがパテを盛って穴を埋め、仕上げてくれました。

水平移動が少ない下半分はまあまあですので、穴が空きそうな部分だけ自動でサポートを作る設定にしてくれると、フィラメントもセーブ出来ていいのにね…。

 

PD 金澤

 

3Dプリンター奮闘記

前回に続き卒業制作展で活躍した「ZEUS」の話題をもうひとつ。
2月21日の最終日を以て無事に閉幕した卒展では、プロダクトデザインコース以外の学生からも、使ってみたいとの要望がありました。
そのひとつは、グラフィックの澤木君からの依頼。 これは「ZEUS」の出力サイズを超える立体物の制作にトライする機会となりました。
形状はシンプルなマグカップと鏡餅型の立体。
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「ZEUS」の出力範囲は、203mm(W) x 152mm(D) x 144mm(H) ですが、今回のマグカップのサイズは高さが 240mm 直径が 150mm …直径だけでギリギリですね。 形状的には「輪っか」を積み上げて行く方向に出力するのが、一番自然で安定しそうですから、当然高さ方向で2ピースに分け出力です。

先ずはマグカップ。 形状はシンプルですので、データは簡単! 壁面に斜めに取り付けたいとのことで底に近い部分を斜めにカットしてあるところが少しトリッキーですが、「ZEUS」はサポートブリッジを作る程では無いと判断した様です。

出力も真円をベースにしていますので、それほど大きなハードルは無いと思っていましたが、問題は時間。 サイズが大きい上に、積層幅0.28mmで、出力の安定を図ろうと少しノズルのスピードをダウン。 2ピースに分けた片方だけで、出力予定時間はなんと9時間。付き合っていられないので、夜中に出力してもらって翌朝には出来ているパターンでGO!順調に動きだした「ZEUS」を見届けて帰宅。

翌朝、楽しみに学校に来てみると…なんという事でしょう!
途中で、何が起こったのか判らないほど、溶けたフィラメントがノズルの回りに固まってしまい、再起不能状態。 たまにフィラメントが切れたり、ノズルが詰まって流れが悪くなることはありましたが、santec さんの営業の方にしっかり教えて頂いた対処法で難なくクリアしてきたのに・・・見たことの無い惨状に目が点。
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朝一で、santec さんに電話。 忙しい中、来校頂きましたが打つ手無し…即ヘッド交換となりました…トホホ 続きは次回。

PD 金澤

3Dプリンター奮闘記

2月16日から栄にある愛知県美術館にて、卒業制作展・大学院修了展がスタートしましたが、この作品の制作にも3Dプリンター「ZEUS」は活躍しています。
しかも、プロダクトデザインコースのみならず、他コースからも3Dプリンターの活躍を聞きつけた学生からトライしてみたいとのオファーがありました。
今回はその実例をいくつか紹介してみましょう。

先ずは、プロダクトデザインコースの須田さんの作品。
コンセプトは、化粧直し用に携帯する口紅をバングルと一体化させ、お洒落に手軽に身に付ける新しいコスメの提案。

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バングル部と口紅の顔料をホールドするパーツ、またそのアクセサリーとしてのバリエーションのモデル化に当たり、先ずはサイズやデザインの試行錯誤から始まりました。

最終的にはメッキ仕上げの必要性から鋳物での制作に移行するのですが、アイデアを簡単に短時間で検証、確認する為に3Dプリンターが大活躍。

イメージする形状をスケッチから3Dモデリングソフトでデータ化します。

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パーツの分割や艤装構造、部品としてのクリアランス等をデータに盛り込み、出力してみます。

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ほぼイメージ通りにモデルが出力されました。 手前の出力は、顔料が入る部分と結合の構造を確認するためのハーフカットモデル。

顔料容量の妥当性やバングル部との結合構造の確認をしてみます。 すると結合用の爪の位置と大きさに問題があることがわかり、早速データを修正し再トライ。

今度は、右奥のモデルの様にトップ部とバングル部がピッタリとフィット。

もちろん、手首に付けてみてサイズや装着感、デザイン形状がイメージ通りかもこの試作品でチェック!

本番用の鋳造をサポートしてくれる学外のスタッフに説明する時にも、モデルがあるととても便利。問題点の共有や気を付けて欲しい部分などの情報を体験的に共有できるのも実寸大のモデルならではのメリット。

アイデアを簡易にスピーディーに具現化することができる…これが3Dプリンターの魅力ですが、これこそが、新世代のシステムデザイナーや製造業にとって新しいビジネスに結びつくヒントをもたらす重要な「ものづくり」の仕組みの変革なのです。

「ものづくり教育」の現場である美術系大学にとって、リアルな立体による試行錯誤が簡単にできることは想像以上に大きなメリットです。

さて須田さんの作品は、バングル部分のバリエーションと口紅の色サンプル、パッケージを含め特製展示台の上に見事に完成しました。 是非、会場に足をお運び頂き、そのクオリティーを御確認下さい。

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PD 金澤

 

 

 

 

 

 

 

 

3Dプリンター奮闘記

いつも水野君ネタなので、今日は並行して進めている沢山の試作の中から別のプロジェクトを紹介しましょう。

今や、クリス・アンダーソン著の「MAKERS〜21世紀の産業革命が始まる」にも出てくる様に、アイデアとPCがあれば、誰でも「ものづくり」が実践出来る時代。(ところで…この本、お薦めです。プロダクトの学生の皆さんにも読んで欲しいです)

3Dプリンターを始めとする「ものづくり」の仕組みの変化によって「工場による大量生産」の対義語は「職人によるクラフト作業」だけでは無くなりました。

製作に時間とお金が掛かる大掛かりなインジェクション成形機による大量生産を前提にコストを下げる従来の「ものづくり」は、安価で短時間で大きな設備を持つことも無く「モノ」を個人的に手に入れる仕組みに変わろうとしています。
3Dプリンターの出力精度も過去の2Dプリンターの進化を見れば、程なく2Dで言うところの写真クオリティーに近づいて行くことでしょう。

大袈裟な前振りはそのくらいにして…今回のトライは、とある家電製品のパーツが破損したことに始まります。
娘の、携帯音楽プレーヤーを防水ケースに入れ再生するスピーカーの脚が折れてしまったのです…T^T(済みません…私用に使ってしまいました…でも3Dプリンターの用途開発の題材ですので、どうか許して下さい m(_  _)m )
メーカーに問い合わせたところ、脚のパーツだけを補用品として買うことが出来ない…とのこと・・・よし、作ったる!

先ずは、破損した部品を採寸し2Dドローソフト(イラストレーター)で図面化!

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計測はノギスで、目盛りは目測ですが…上手くいきます様に!

次に、図面をベースに3Dモデリングソフト(今回は Shade)で、データ化。

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Shadeは、Illustratorのパスデータを読み込めるので、寸法精度が必要なデータはイラレで作ってから取り込むのが簡単!

最後に、ZEUSで出力・・・う〜ん、簡単!

出力時の積層段差はあるし、上部の細かい突起の再現性にはやや不満が残るものの、ペーパーで仕上げると、何とか見られるレベルに。

早速、破損部品と交換して艤装してみると…肝心の寸法精度も、まあ合格レベル。
使えます (^_^)v

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右側がオリジナル。 左側が3Dプリンターで出力した部品。 色合わせまでは無理…。

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脚の角度調整時のクリック感もちゃんと再現できました。

 

クルマ業界では、発表したモデルの補用品(交換用パーツ)を…或いは、その成形型を10年間は保管しています。 モデルチェンジ後もユーザーの事故による破損や故障で交換する部品が無くなると困るからですが、モデル当たり数千点に上る補用品を長期に渡り確保することはメーカーにとっても大きな負担です。

…でも重要保安部品では無い様な業界のパーツなら、簡単に自分で作ることができる時代になるのかも知れませんね。

ユーザーは、壊れた部品のデータをネットからダウンロードすれば、部品の到着を待つことなく家で…或いは出力センターなどで自作すればいいだけ!

メーカーも、ユーザーに渡すデータさえ持っていれば良いのなら、大きな型や作り溜めした嵩張る部品を保管する必要も無く、土地代も管理費も…これに掛かる金利だって不要になっていく時代です。

3Dプリンターが持つ「ものづくり」の可能性は、色々なところに波及しそうですね。

PD 金澤

3Dプリンター奮闘記

今日も水野君の作品を紹介しましょう。

彼が取り組んでいるのは、戦車のスケールモデル。 その中でも細かい部品が組み合わされる履帯と呼ばれる車輪部分を3Dプリンターで再現しようとしています。 前回は履帯を構成するパーツの再現にちょっとしたコツが必要だったことをレポートしましたが、中には原因が分からず対処方法が判らない事態にも出くわします。

履帯の構成パーツは何十という数の同じ部品を出力する必要がありますので、形状の再現がある程度担保できた時点で、一度に沢山出力できる様にしたいですよね。 複数取りできる様に、プラモデルの要領でパーツをライナーで繋ぎ、ひとつの塊の様にデータを作り出力し、後からライナー部分を切り離せば、一度に量産ができるというわけで、早速トライ!
ところが…ひとつずつ出力していた時には一定の密度でソリッドなモデルができていたのですが、10ヶ取りの量産型では樹脂の密度が粗くなり隙間ができてしまいました。

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左は1つずつ出力  右は10ヶ取りの量産型

スライスする時のモードも出力する時のモードも同じなのですが、原因が特定出来ず…かといって1ヶずつ再出力と部品取り出しを繰り返すのも非効率なので、強度的に問題無いことを確認して思い切って量産体制に移行しました。
未だに原因が分かりませんが、ひとまずは下の様に組み上げることができました。

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まだ数は足りていませんが繋ぐとこんな感じ!

PD 金澤

3Dプリンター奮闘記

santec 株式会社様との産学連携…3Dプリンターの用途開発!

前回はデジタルメディアデザインコースの水野君の作品を紹介しましたが、この作品は小さな凹凸や細い合わせ部品を含む数多くの種類のパーツで構成されています。
例えば、履帯(キャタピラ)を構成する1つのピースは画像(図1)の様なディテールを持つ形で、シャフトを介してお互い隣のパーツと繋がります。(図2)

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図1

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図2

本当は、ピンクの部分と肌色のパーツも分かれていて、可動するジョイントとなるのですが、ピースが細かくなり過ぎますので、ここは一体に。
苦労したのは、部品中央にそびえ立つ細長い突起部。 この突起はホイールのリム幅中央に設けられた溝にはまり、履帯がホイールから外れない様にする重要な部分。
4つ並んだ試作品の一番右側が初期品です。(図3)

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中央の突起部が潰れてしまっていることが判ります。(赤丸)

3Dプリンターは等高線を…年輪を描く様に熱した細いフィラメント(熱可塑性樹脂)を出力し積み上げていきます。

出力の様子を観察していると、部品が小さいため、出力したフィラメントが冷えて固まる前にどんどん次の高さを出力してしまうことから、しっかり積み上がっていかないことが判明。出力速度の調整してみても改善が見られませんでした。

後期の試作(図3左2つ)では、最後には切ってしまうダミーの柱(青丸)を2本設け出力。 するとダミーの柱を出力する間にメインの柱が冷え、しっかり上の層が積み上がって行くことが分かりました。
当初はジョイントの為のシャフトも一体成形してしまおう(黄丸)と試みたのですが、剛性と精度が必要となることから断念。 そのお陰で、後で切断しやすい部分にダミー柱を立てるエリアを確保できました。

小さなパーツですが、ひとつの形状を再現する為に、色々なアイデアと試行錯誤が詰まった水野君の力作です。

つづく

PD 金澤

 

3Dプリンターの用途開発

今、プロダクトデザインコースでは、学校のすぐそばにある「santec株式会社」様と、ちょっと変わった産学連携に取り組んでいます。
この11月4日から同社が扱われているスキャナー付き3Dプリンター「ZEUS」をお借りしての取り組みです。

今回は、この機械を使って様々な授業課題その他に取り組み、3Dプリンターの可能性を探っていこうと思います。
「ZEUS」が得意とする造形は勿論、使い勝手の善し悪しや改善点、失敗例とその対策案などもレポートしながら、これからの教育現場での新しい「ものづくり」のヒントに繋がることを狙います。

まず1回目の今回は、「ZEUS」の魅力から…。
オールインワンでコンパクトな上、gcode(出力用パスデータ)に変換するスライスソフトまでが内蔵されているので、アプリケーションをインストールした別のPCを繋ぐ必要もなく、USBメモリーに入れたSLTデータ(ポリゴンデータ)さえあれば出力出来る「1台完結型」の便利な機械です。

先ずは、インターフェース。
作業の流れはシンプルで、きれいなカラー液晶の画面に沿って進めていくことで、データに問題の無い標準的な出力なら、いたって簡単な手順です。

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スタートアップはシンプル。目的のメニューに沿ってタッチ画面に触れていくだけ!

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履帯には細かい沢山のパーツが必要です

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ターンテーブルと比較しながら、レイアウトやサイズ、出力方向を確認出来るので判りやすい!

この1ヶ月間、この「ZEUS」に貼り付いて、試行錯誤にチャレンジしてくれたデジタルメディアデザインコースの水野君の作品から紹介していきましょう!

この12/15〜12/20から大曽根にあるギャラリー矢田で開催された「Digital Media Design Exhibition 2015」に出品する為に、ほぼ毎日プロダクトデザインコースの研究室に通い続け作り上げたのは、戦車のスケールモデルに使用するキャタピラ(キャタピラは米国キャタピラー社の登録商標だそうで、日本語では「履帯」や「無限軌道」と呼ばれるそうです)

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水野君の展示。3DCGの画面も見応え十分!

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これで40パーツの履板と駆動用ホイール、通常ホイール、固定軸など沢山の部品が必要です。

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手前に広げて置いてあるのが、履帯の一部。 細かいパーツが丹念に組み合わさっていますね!

作品では、この履帯を構成するピースとこれを駆動するギア付きのホイール、中に収まるホイール、車軸など複雑で細かいパーツの数々を3Dソフトで作成し、丹念に組み上げた実際に稼働する力作です。
部品には組み上げる為の細かい凹凸や中抜き構造があり、最初は中々安定した形状に出力することが出来ませんでした。 上手くいかない原因を考え、データ修正のトライ&エラーを何度も繰り返し、一定の形状を出力することに成功しました。

次回からは、そのノウハウも少しずつ紹介していきますのでお楽しみに!

PD 金澤