早いものでカリキュラムも2/3近くを消化しました。
4月から赴任した私にとって、実技授業もさることながら…講義授業は、また別の手探り感があり…ある意味スリリングで緊張感たっぷり…ドキドキとワクワクと反省のヘビーローテーション状態です。
そんな中…今回は、車の開発プロセスについての解説。
へへへ…これは30年近くやってきた専門分野なので、目を瞑っていてもしゃべれる話題です。 逆に話したいことが幾らでもあるので、90分に収まる様、かえってシンプルに説明する資料作りに往生…思いつくままに作った資料は当初100ページを超え、どんどん削除、どんどん合体…なんとか60ページ前後に収め…いざ出陣。 駆け足でしたが最後まで行きました。
学生の皆さんにとっては「いい迷惑」で、情報がオーバーフローしたかと思いきや、現場でのコンセプトパネルやスケッチ、クレイモデルや風洞試験の様子など、普段あまり目にすることの無い画像には関心を寄せてくれた学生もいた様です。
私にとって車のデザインは30年間の糧であった訳ですが、「自分が携わったモデルが街中で活き活きと走る姿」は、いつも「狂喜乱舞する喜び」を倍増し、「七転八倒した苦しみ」を半分にしてくれる魔法のモチベーションでした。 「ものづくり」の現場には、お金以上の宝(もしくは万病に効く特効薬)が埋まっていて、日々それを掘り起こすほどに、喜びを得、苦しみを緩和してきたのだ…学生の皆さんに資料を説明しながら、そんなことを考えました。
正直にお話しすると、企業というリアルな「ものづくり」の現場から離れることには…当初、戦線離脱する様な寂しさや悔いが残るのでは無いかといった気持ちもゼロではありませんでした。しかしながら、教育の現場では自分の手掛けたプロダクトが世の中に出て行く訳ではありませんが、大学は大学で「ものづくり」の現場に違いはなく、今では車よりも遙かに大切な…沢山の「これからの才能」と一緒に時間を過ごしていることが何よりも幸せです。 むしろ様々な制約が少ない分だけ、純粋に「ものづくり」に傾注できる素晴らしい環境だとさえ思います。
教育の現場は、一時的とは言え、他人様の人生を預かる商売ですから、大変恐い仕事だ…といつも感じています。 しかしながら若い世代の皆さんと時間を共有することは、私にとっても大変大きな刺激です。 50を過ぎて、自分が社会人として現役でいることが出来る残りの時間を如何に悔いの無いものにしようか…転職を考えたきっかけはそんなことでした。色々な御縁があって、幸せなことに昔から関心のあった現場にようやく辿り着き半年経ったところです。
取り分け、プロダクトデザイン論の配当年次である1年次生の皆さんは、私の再スタート時に入学された…絶対に忘れることが出来ない学年です。 毎回皆さんから提出頂くレポートは、即ち、その日の私の講義に対する評価書ですので…毎回読むのは、楽しみ半分/不安半分なのですが、いつも見事なイラストや独自のイメージ的語呂合わせなどを盛り込んだ右脳全開の作品のお陰で、最近は楽しみの方が多くなってきた様です。 これも私の大切な幸運のひとつです。
プロダクトデザイン 金澤