卒展プレビュー 第2弾

「音色」…音の大きさやピッチだけでは無く、日本人は「音の質」に彩(いろどり)を感じ、季節感や心情的なニュアンスをその言葉に乗せてきました。

「ねいろ」という言葉の響きにも、私たちは「優しさ」や「懐かしさ」「心地良さ」を届けてくれる特別な情緒を感じているのでは無いでしょうか?

 

今回ご紹介する関谷祥子さんの作品も従来には無い商品の企画です。

彼女が取り組んでいるのは、色を音に変換する装置を使って、体験を新しいスタイルで記録・記憶することで生活に「彩り」を添えようという提案です。
いったい、何処からそんな発想を思いつくのでしょうか?!

sketch

スケッチの山…の、ほんの一部。 負けないくらいのモデルの残骸…の、ほんの一部…

彼女は、本学が実施している交換留学制度を利用し、ドイツのワイマール・バウハウス大学で学んだ経験を持っています。バウハウス大学での課題の中に、電子回路を使用した商品のコンセプトを考えるものがあり、彼女はそこでアルディーノという電子回路キットと出会います。様々なセンサーを組み合わせ、それらを制御するプログラムを書くことで、新しい装置を作り出すことができるというもの。

彼女が取り組んだのは、カラーセンサーを用い、色の周波数を信号に変え、周波数に合わせ異なる音程を発する装置。

今回の提案は、バウハウスで取り組んだテーマを更に発展させ、どういった商品に展開することができるかにチャレンジした成果です。

スマホの登場で、今や誰もが旅行先や日常で手軽に写真を撮り、それをSNSなどで簡単に拡散することができる時代になりました。
彼女の提案は、専用のカメラで撮影した写真画像の色の要素を抽出し、帯状の色短冊を出力。この色帯を専用のプレイヤーに装着すると、独自のアルゴリズムで音に変換するというもので、景色の画像だけではなく、その体験に音楽を添えて想い出をステキに演出しようというものです。

彼女はバウハウスで「もの(立体)で考える」習慣を身に付けてきた様で、早い段階からペーパーモックやNC切削加工を駆使し「アイデアの見える化」を積極的に進めてきました。

アイデアを直ぐに立体化・検証し、素早く改善点を洗い出すことはデザイン作業に於いて、とても大切なプロセスです。 アトリエにも設置している3Dプリンターやレーザー加工機は最終的なモデルを作る為にも使用しますが、効率的にPDCAを回す為にもどんどん活用して欲しいですね。

事実、彼女の作業台には、スタイリングを検討するスケッチやモックアップに加え、自分でハンダ付けした回路とそれを検証するテスター類、実動モデル化するためのLEDランプ回路やモーターなどが所狭しと並んでいます。

sekiya2-723x1024

この日の作業では、上部ターンテーブルの回転速度を決める為に、何Ωの抵抗値が適正かを検証していました

本学のメディアデザインコースなら、日常的に回路設計やプログラミングと接しているかも知れませんが、プロダクトデザインコースでは、ちょっとしたチャレンジでもあり、みんな興味津々で彼女の作業を見つめています。

今後はメディアデザインコースとの協働も強化し、こういったIOTの分野にも視野を広げ新しいモノづくりにもチャレンジしていきたいと考えています。

2月に入りモデルの全貌も見え、とても面白い作品になりそうです。 音と色を繋ぐ言葉…「音色」に込めた想い・・「neiro」。それがこの作品のステキな名前です。

2月10日〜18日@名古屋造形大学キャンパスで開催の卒業制作展に是非足をお運び下さい。

 

PD 金澤