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キャリア・就職

学芸員


学芸員とは、博物館に勤務して資料の研究と収集に携わり、展覧会を企画運営や普及活動に従事する専門職員です。学芸員資格は文部科学省が所管する国家資格ですので、正式に学芸員を名乗るためには学芸員資格を持つ必要があります。
なお、博物館には歴史、芸術、民俗、産業、自然科学などさまざまな分野があり、美術館もそのひとつです。学芸員になるには、その館が扱う分野に対して専門的な知識を身につけている必要があります。

学芸員の資格は、大学で所定の科目を履修して取得することができます。名古屋造形大学は、この文部科学省令の定める博物館に関する科目が開講されていますので、この単位を修得し、大学を卒業して学士の学位を取得すると、学芸員の資格を取得したことになります。

「資格をとっても学芸員にはなれないし、あまりメリットのない資格では?」と問われることもあります。確かに実際に博物館に就職するには、欠員と募集が前提ですし、はたして自分の専門性にあった条件で、高い倍率の選考に耐えられるかという意味では、実力に加えて縁と運による側面もあり、非常に狭き門と言えるでしょう。

しかし「博物館学の知識を修得」して「学芸員の資格をもっている」ということには、大きな意味があります。特に美術系大学で学ぶみなさんには、単に「履歴書に書ける資格」というだけでなく、そこに豊かな意味や価値を見出すことができます。端的に言えば、自分の創作と社会との関わりや、芸術文化の意味を歴史的かつ実践的に捉える視点をもつということです。

【空間作法領域】卒業生 齋藤智愛 / コメント

―学芸員の仕事で、大学での勉強が活かされていると感じることを教えて下さい。
仕事で作家の方とお話をする機会がたくさんあるのですが、技法などについて基礎知識があるので、お話がしやすいです。もちろん美術史はとっても大切なのですが、自分が実技を学んでいたということは、すごく強みになっています。
作品に使用されている技法はどのようなものか、素材はどのようなものを使っているのか、実技を学んだからこそ、理解しやすいと思います。

必要な能力 TOP5

技術力 追及心 行動力 継続力 発想力
社交性 協調性 客観性 几帳面 責任感
向上心 主体性 柔軟性 計画性 自制心

大学で身に付けるべき能力

  • 所定科目(9科目19単位)を計画的に履修する
  • 多くの美術館・博物館へ足を運び、展示を観る
  • 博物館への期待や課題を、常に自分の問題として考えてみる

所定科目(9科目19単位)を計画的に履修する

所定の科目(9科目19単位)とは、本学では「生涯学習概論」「博物館概論」「博物館経営論」「博物館資料論」「博物館資料保存論」「博物館展示論」「博物館教育論」「視聴覚教育メディア論」「博物館実習Ⅰ・Ⅱ」になります。これらの単位を計画に取得することが必要です。授業は、本学の専任教員だけでなく、実際に現役の学芸員の講師が担当するなど、多彩です。特に4年次に実際に博物館に受け入れてもらっての約1週間の実習は、非常に充実した経験を得ることになるでしょう。
ちなみに学芸員資格は、文化庁が年1回実施している学芸員資格認定試験に合格する方法もありますが、必須科目8科目と選択科目2科目の筆記試験が課されるので、かなり集中して準備をする必要があります。卒業と同時に取得できる資格ですので、在学中での科目履修をお勧めします。

多くの美術館・博物館へ足を運び、展示を観る

博物館は、「もの」によって示された人類の営みを「収集」「保存」し、恒久的に「展示」「研究」する公共的な施設もしくは期間である、と定義されます。そうした実際の現場を知らずして、博物館に関する学びは机上の空論になってしまいます。もちろん歴史を紐解きながらの学習もしますが、博物館は同時代に存在し続けて機能する生きたものであることが重要です。
講義では、様々な実例も示されますが、ぜひとも多くの博物館に実際に足を運び、利用することを心がけてください。自分の専攻するジャンルはもちろんのこと、幅広い領域に目を向けることは、ひいては自分の創作に関する発想の刺激にもなるかもしれません。博物館の利用者であることが、学芸員の仕事に関しての知識の参照にもなります。

博物館への期待や課題を、常に自分の問題として考えてみる

今後の博物館への期待や課題は、私たちが芸術や文化をどう生活や社会の中に生かしているかということにつながります。たとえば、2020年の私たちは、新型コロナウイルス感染症拡大への対処として、「不要不急」の外出自粛が要請されることになりました。多くの芸術活動が中止を、また博物館は休館を余儀なくされ、そのための対応が模索されています。
上記で「多くの美術館・博物館へ足を運び、展示を観る」を推奨しましたが、実際にはそれが叶わない事態になったわけです。こうした局面で、博物館は、学芸員は、芸術家は、行政は、何をするべきか。新たな時代の課題として、インターネットの活用や技術という表層だけでなく、博物館の存在そのものの価値が問われるのです。
また、近年、盛んになった地域での芸術祭や国際展(ビエンナーレ、トリエンナーレ)などで顕在化した問題も無縁ではありません。同時代に生きる創作者として、常に社会の動向を自らの問題として捉える態度を心がけましょう。そうした示唆を得ることも、「博物館学の知識を修得」して「学芸員の資格をもっている」ことの証となるはずです。

学芸員になるためには

公立美術館の正規採用の学芸員の職に就くのは、狭き門であるのは確かですが、しかし、この職業をもう少し拡げて解釈すると、かなり多彩な役割が見えてきます。欧米ではすでに分業されている展示の専門職員、アーカイヴィスト、エデュケーター(教育専門員)、広報担当職員などがあります。
最近では特定の機関に属さないインディペンデント・キュレーターも増えてきました。芸術祭などでは、暫定的にキュレーター・チームが組織され、アシスタント・キュレーター、さらにスタッフやインターンやボランティアも必要となります。実は、この資格を活かす、必要とされる場面は拡がっているとも言えるでしょう。たとえば、広告代理店、企業の広報部門のマネージャー、ギャラリーのスタッフ、文化振興事業団の専門スタッフ、芸術祭やアートプロジェクトのスタッフやコーディネーターなどです。

美術表現領域の高橋スタジオでは、プロジェクト体験を実践し、現場の専門家からの指南も得ます。さらに、こうした就職を志望する学生には、領域・スタジオを超えて指導、サポートにあたります。