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卒業生紹介

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四時 / 西尾和真さん・廣田怜己さん


なぜ美大進学を選んだのですか?

西尾くん:“ものづくり”をすることが好きなので、最初は理工学を検討したんですけど、学力の面で目指せず…他の進路を探した結果、デザインという形で”ものづくり”に関わることが出来るんだと知って、美大進学を考えました。それで、家から通いやすかったこともあり、名古屋造形の受験を決意しました。

廣田さん:座って勉強ばっかりするよりはとにかく手を動かしたくて…という理由です(笑)
小中高と10年間バスケをしていたこともあり、美大にするか体育系の大学にするか迷っていました。自分の中で天秤に掛けてみて、美大の方が面白いかなと思い、選びました。

どうして、空間作法領域(旧 プロダクトデザインコース/ジュエリーデザインコース)を選んだのですか?

西尾くん:オープンキャンパスに来てみたら、僕がやりたいデザインはプロダクトデザインだと思ったからです。多分、何も知らずに受験していたら、イラストレーションデザインとかグラフィックデザインを選んでいたんじゃないかな。元々普通科だったこともあり、高校までデザインという世界がこんなに広いことを知らなかったんですよね。オープンキャンパスでの経験が決め手になりました。

廣田さん:春画とかミュシャとかビアズリーとか絵画作品が好きで、本当は洋画や日本画がやりたかったんですけど、高校までデッサンはやったことがなかったので流石に無謀かもしれないと思い、オープンキャンパスでジュエリーデザインを見学してみたんです。その時に先生から「ジュエリーデザインは高校まで誰もやっていないから、全員がゼロからのスタートだよ。」と教えてもらい、それなら頑張れそうだったのと、ジュエリーってかっこいいと思ったので、軽い気持ちで選びました。

実際に入ってみてどうでしたか?

西尾くん:木材、粘土、3Dプリンターなど、なんでも素材が触れるので、色んなものを作りたい人は楽しいですよ。
僕、最初はカーデザイナーになりたいなと思っていたんですけど…カーデザイナーはスパルタな業界で、ちょっと厳しいかなと諦めたんです。でも僕は立体の”ものづくり”がしたかったので、結果的にここを選んで正解だったと思っています。

廣田さん:好きなもの作っている時は楽しいですよ。でも、やりたくない課題は正直あんまり楽しくない(笑)私は自分の意志を曲げないので、しょっちゅう先生とぶち当たっていましたね。流石に4年間もいたので、今では私の性格を先生たちは知っていて、意図を組んで指導してくれるようになりました。ある意味…理解されたのかな?そんな感じです(笑)

卒業制作について教えて下さい。

西尾くん:コーヒー豆を挽くミルの動くコンセプトモデルを制作しました。ベースは早いうちから決まっていたんですけど、どういう方向性にしようか右往左往しながらも、”形態は機能に従う”という建築家のルイス・サリヴァンが提唱した機能主義によるデザイン概念を基に、機械の厳密さの魅力を活かした作品に仕上げました。歯車とか中の機械的要素を、デザインから見ても機能面から見ても良い形にしたかったんです。エンジニア的な要素もあるので、その辺に中々苦労しましたね。

廣田さん:コンセプトは”性暴力に対する無関心を無くす”です。私は今、性差別やジェンダーに関することに意識を向けているので、そこから的を小さく絞り、このコンセプトに至りました。
具体的には、性犯罪から身を守るための装飾品として、防犯ブザーやGPSを組み込んだ指輪を提案しています。防犯ブザーってカバンの中に入れていても探す手間がかかるし、キーホルダーとして付けるのもダサい。でも指輪なら、体を抑えられちゃった時でも指だけで使うことができるし、色んな人に受け入れられやすいと思ったんです。
防犯のための装飾品の提案の他にも、性暴力を受けてしまったらどうしたらいいのか、今現在問題になっている性差別や社会の問題は何なのか、など情報自体も公開する展示内容にしました。

大学生活で、為になった、面白かったと思うエピソードを教えて下さい。

西尾くん:工房職員の渡辺さんととても仲良くなったんです、コーヒーが大好きな陶芸作家の方で、僕は高校までコーヒーを飲めなかったのに渡辺さんのおかげで飲めるようになって、めちゃくちゃ好きになり、今では自分でも淹れるまでになりました。そうしたら今度は、コーヒーのミルとか器具作っていくことに興味を持つようになった。他にも、海外で活躍している大学の先輩デザイナーの方とも仲良くなったり、デザイナーの先生から話を聞いたり、とにかく周りの人から色んな角度で影響を受ける大学生活でした。

廣田さん:私も、事務の方とか講義の授業の先生とか、名古屋造形大学には面白い大人の方々が多くて、授業以外でも仲良くしてくれたのが楽しかったですね。

西尾くん:あと勿論、廣田さんにも影響受けていますよ。僕はどちらかというと色んな人の意見を聞いて物事を考えるタイプなんですけど、彼女は自分の意志の強さがある。ここには周りに居る人の分だけ多様な考えがあり、その考えの1つを選ぶんじゃなくて、良いとこ取りを出来る環境が名古屋造形にはありました。

廣田さん:二人とも、好きな事をそれぞれの角度で追求していく4年間でしたね。

『四時』を始めたキッカケを教えて下さい。

西尾くん:入学当初、周りとのレベル差や劣等感を感じていました。今まで高校でもデザインをやってきた同級生や浪人生が同じ教室にいる中、僕は普通科出身。同じ課題をこなしても成果物の仕上がり具合が違う。しかも1年生の間から他大学とのネットワークも出来ていて、学外でも積極的に活動している人が多かった。
そんな2年間を過ごし3年生になった時、僕にできることは何だろうな?と考え、授業の一環でやっていた陶芸にハマっていたこともあり、『四時』が生まれたんです。やりたいこととやれることを掛け合わせた結果、ここにたどり着きました。

『四時』のコンセプトは何ですか?

廣田さん:主張するのではなく、若者、主婦、老若男女付ける人を選ばない、誰でも使えるアクセサリーをコンセプトとして展開しています。配色は銀と白と黒しか使わないことを貫いています。私がそういうシンプルで彩度の低いもの、モノクロ系統のものが好きなので。

最初に販売を始めたのはいつですか?

西尾くん:去年の7月に開催されたサンデービルヂングマーケット、通称サンビルに出店したのが最初です。出店ペースは2か月に1回ぐらいです。

廣田さん:元々サンビルにはお客さんとして通っていたので、イベントの存在は知っていました。それでここで販売してみてもいいんじゃないかなって、スタートしました。

イベントに出店してみてどうでしたか?

西尾くん:不特定多数の人が来てくれるのが楽しいですね。展示にしてしまうと、最初からその展示を見ることを目当てにした人にしか出会うことができないじゃないですか。でもこういうイベント形式ですと、フラッと来ただけの人とも接することができる。
アートとの違いのような部分だと思うのですが、デザインってお客さんありきの仕事なので、実際に人に販売してみてこそ、推測ではなくわかることが沢山ある。僕らの場合ですと、初めての出店の頃より商品のディスプレイの仕方を変えてみたり、商品サイズ感を小さくしてみたり、お客さんのニーズを考えた商品展開を模索し続けてきました。

廣田さん:アレルギー反応がしにくいものを使用するなど、素材の面でもお客さんのことは意識するように制作しましたね。そういう部分も含め、様々な経験値が培えたと思います。

イベントに参加する時に、大変だったことはありますか?

西尾くん:めちゃくちゃ大変だって思うことはあまりなかったですが…敢えて言うなら、準備が大変でした。今は軽自動車に全てが乗るように荷物を用意し、コールマンのカートで運び、そのまま販売できるようにしていますが、始めたばかりは毎回違う荷物の準備をしていたので手間がかかっていました。最初に比べると、かなり効率よく出来るようになりましたね。

廣田さん:西尾くんをほっておくと、イベントの度に新しい机とか作ってくるんですよ。なので最初は準備品だけでお金かかっちゃって(笑)でもお客さんの中には、机が新しくなったこととか細かい変化まで気付いてくれる人もいて、それもなんやかんや面白かったですね。

西尾くん:つい好きなので作っちゃうんですよ(笑)「この机良いね~!」とか、中々気付いてもらえないこだわりも見てくださる方がいたのは、やっぱり嬉しかったです。

活動時に意識していたことはありますか?

西尾くん:常連になったお客さんのニーズに合わせてみようとか、机の高さは少し高めに変更してみようとか、他の出品者さんを見て参考にしようとか、そんな初歩的な所から改良していって、徐々に売り上げも伸びていきました。
『四時』にはコンセプトはあったけど明確に目標を設定していなくて、それが逆に色んな角度から工夫を凝らすことを可能にしていたのかなと思っています。
陶器アクセサリーって販売の面から見ると比較的結果が出やすいんですよね。とは言っても、ニーズに合わせて作ったけど次のイベントではまったく売れなかったというのは普通にある。それはあくまでその時のお客さんの層だと割り切って、あんまり狙いすぎない姿勢だからこそ続けられたのかなと思います。

やってみて、率直にどうでしたか?

西尾くん:良かったですね。色んな人脈が築け、本当に活動して正解だったと思っています。半年ぐらい始めるのが遅かったら、今こんな風になってなかったですね。入った頃より考え方も視野もすごく広がりました。

廣田さん:楽しかったです!わたしアルバイトでは接客業をしていて化粧品を売っているんです。なので接客をしてものを売る経験値はそれなりにあり、何よりも好きなことなので、得意なことを活かして自分たちの作ったアクセサリーをお客様にお届けできるっていうのが、本当に楽しかったです。

卒業後について教えて下さい。

西尾くん:前回のイベントで『四時』の活動は休止させていただきました。引き続き活動したい気持ちはありますが、窯の準備や卒業制作、就活、場所、時間の兼ね合い等々の関係で、卒業後続けることは難しいんです。でも、粘土ってかなり融通が利く素材なので、また環境が整ったら再開したいかな。
就職は、有名コーヒーメーカーがミルなどの製品デザインも手掛けているのを知り、エントリーしてみた結果、その会社に内定を頂けました。自分の好きなジャンルなので、かなり楽しみですね。

廣田さん:私は就活自体をしなかったので、卒業制作展が終わり次第、3月ごろからゆるりゆるりと仕事を探そうと思っています。希望としては、金属に触れることのできる仕事や、自分の得意な販売、接客業がいいかな。仕事とは別に、できれば制作活動もしたいですし、卒業制作で取り上げた分野だけにとどまらず、もっと視野を広げ勉強していきたいです。しっかりと自分の意思を持ち、今後も私の考えや訴えたいことを主張し続けようと思います。