コンテンポラリーアート領域   「ピンホール写真」小林担当 その1

6月7日から毎週木曜日の3、4限目
「ピンホール写真」の授業が始まった。

この授業はコンテンポラリーアート・コースが旧総合造形コースの時代から10年以上にわたって続けている歴史ある授業だ。

授業では、まず最初に光の性質や眼の構造の解説、そして、古代からの絵画の歴史、その後、カメラオブスクラや写真が絵画に及ぼした影響など、視覚芸術を学ぶ上での基本的な事柄を画像を交えながらのレクチャーで学び、さらに、写真スタジオを完全暗室(カメラオブスクラ)化した中で外の風景がピンホールを通して映り込む様子を体験する。

昨年までの授業では、このあと、各自が携帯型のカメラオブスクラを製作し、写真暗室で現像作業を行っていたのだが、残念なことに国内メーカーのモノクロ印画紙が製造打ち切りとなったので、この際、思い切って”デジタル化”することにした。といっても、デジカメにピンホール(針穴)を付けるだけなので、超手仕事的なのだ。

とは言っても、デジカメでピンホール写真を撮るのは初めてのことで、すべてが手探り。本当は授業前に試作して写しておこうかと思ったのだが「初めてのことをする”醍醐味”を学生と分かち合わなければもったいない!」と考え、ぶっつけ本番で、学生と「ああでもないこうでもない」と試行錯誤しながら進めてゆくことにした。

カメラのボディ・キャップに穴を開け、
そこに黒い紙に極小の穴を開けたものを取り付ける。

これが記念すべき「デジタル・ピンホールカメラ第1号」

恐る恐る撮ってみたら…

撮れるじゃないか!?

ボヤーッとしてはいるが写ってる!

これなんか、なかなか美しい!

印画紙を使っていた前回まではモノクロの世界にとどまっていたが、
色が出るのは何より素晴らしい!

・・・ただ、もう少し画像がシャープにならないものか…? ピンホールなのでレンズのようには行かないことはもちろん分かっている。しかも、以前は6つ切りの印画紙そのものがいわばイメージ・センサーだったのに比べ、このカメラのイメージ・センサーは大幅に小さい。当然、ピンホールの大きさをいくら小さくしても解像度に限界はある。


などと悩みながらも、我々は大胆にも「望遠レンズ」ならぬ
「望遠ピンホール」の製作に取りかかった。

構造は極めて簡単で、ピンホールをイメージ・センサーから遠ざけるだけ。

そのために、こんなパイプ状のものをホームセンターで買ってきた(白い絵の具が縁に塗ってあるが、これはカメラのボディ・キャップに穴開けの位置を転写するため・・・実際にはこの方法はボツとなった)。

そしてカメラのボディ・キャップに穴を開ける作業。
これは木工室で技術職員の田立氏の指導を得ながら行った。

ボール盤を使い、円形に穴を開けて行く。

そして、糸ノコで穴をつなぎながら切って行き、

最後にこんな機械で穴の内側を削って大きさと形を整える。
こんな便利なものがあるとは知らなかった!

そして先ほどのパイプをグルーガンで接着。

そして、完成した姿がこれ。

なんと無骨な! 

旧ドイツ軍のパンツァー(戦車)のようなイメージ!

これで写した画像は次回のお楽しみ!

さて、実は重要なことが判った。

今回、シャープさを増すためにピンホールを出来るだけ小さく開けることを目指したのだが、明らかに小さいピンホールで撮影したものが、少し大きめのものよりシャープさで劣ることが判明。絶望の淵に追い込まれた。

あとでネット上であれこれ調べてみてほぼ原因を突き止めることができた。写真のクオリティを上げるにはピンホールを小さくすることよりもきれいなピンホールを開けることが重要らしい。紙ではきれいな穴は開かないのだ!

そこで、評価の高い銅箔を購入。次回はこれで試してみる!

結果は乞うご期待!

※ ピンホール写真の画像はすべて学生が撮影したものです

(小林)