3月3日(日)晴れ

楽しいひな祭り、心に染みる〜♪
という美空ひばりさんのCMソングを思い出す。今日はおひな祭りの日だ。

ただ、3月3日というと私にとっては別の意味がある。それは、私が受験生の頃の辛い思い出に繋がる。そう、3月3日は東京芸大の入試の初日だったのだ。最終(3次試験)の発表が3月20日。日一日と温かくなり、日差しにも春らしさを感じる頃、気分はだんだん沈んでゆく。
最近でこそ軽減したが、長いあいだ受験のトラウマのため、私にとって初春は憂鬱な季節だった。1校しか受験しないので、落ちると1年後にしかチャンスが来ない。試験は3次試験まであり、2次試験まで受かれば合計試験日数は6日に及ぶ。3次試験まで受けて落ちたときは半年間くらい立ち直れなかった。当時、倍率は40倍を超えていた。
時間がもったいなかったな〜、と思ったのは大学院を修了してドイツに行ったときだった。浪人を重ねるより、早く海外に行くという選択肢もあったなと、その時初めて気付いた。

さて、今日は午前中、兵庫県立星陵高校の同窓会東海支部の幹事会があり、4月21日に名古屋で行われる総会のための打ち合わせをした。神戸市にある高校で、東京と名古屋に同窓会の支部がある。東海支部の総会は6年目になるが、毎年40〜50人くらいは集まる。
高校は神戸の西の垂水区というところにあり、校舎からは明石海峡、淡路島が一望できる。学校の雰囲気も風景と同じく、明るくてノンビリしていた。美しい環境や自由な校風のためか、卒業後も母校への愛情を持ち続けている人が多いように思う。

午後は、小牧市東部市民会館という、私が住む桃花台の中にある小さなホールで小曽根真さんのピアノリサイタルが開催された。チケットを手に入れて以来、この日が来るのを楽しみにしていた。

小曽根真さんは何度かNHK-FMで聴いたことがあり、一度生で聴いてみたいと思っていたピアニストだ。
小曽根真さんは神戸市出身。お父様は小曽根実さん。小曽根実さんは神戸のラジオ関西の夕方の番組「サテライトスタジオ」でハモンドオルガンを弾いていらっしゃった。このテーマ音楽は今でも鮮やかに蘇ってくるほど印象的な音楽だった。また、夜のTV番組”11pm”にも出演されていた。

今日の小曽根真さんのリサイタル、ほとんどがご自身の作曲だった。スピード感のある曲から静かに心に染み入るような曲まで幅が広く、どれも最高に洗練された美しい音楽だった。
“Longing for the past” は東日本大震災のあとで書かれた曲で、作曲するとき、神戸のご自宅が震災に遭われた記憶が蘇ってきたという。
私の神戸の実家も被災した。震災後、交通機関が長い間復旧せず、住吉と灘の間が開通したのは震災後70日以上経ってからだった。復旧後”新快速で大阪から神戸に向かっていて「次は三ノ宮」という車内アナウンスを聞いたとき涙が止まらなかった”という小曽根さんのお話を聞いて、身につまされる思いがした。
演奏の間の小曽根さんのトークは実に機知に富んでいて、面白いが決して嫌みなところがない。音楽もお話も最上級だった。

小曽根さんのお陰で3月3日のメランコリックな日曜日が幸せに満ちた日曜日になった。小曽根さんありがとう!