名古屋造形大学の D-1,D-2,D-3 ギャラリーで「吉岡俊直展:道しるべ Guideposts」が開催されている。
吉岡さんは 1972 年京都府生まれ、京都市立芸術大学大学院を修了され、その後作家として活躍されている。2001年からは名古屋造形大学に勤められ、現在はコンテンポラリーアートコース准教授。出身大学での専門は版画だが、コンピュータグラフィックを用いた映像作品も多数制作されている。
今回は大学の卒業作品から現在の作品まで多くの作品が展示され、吉岡俊直のすべて、と言ってよいほど充実した内容となっている。中でも2001年の名古屋造形大学赴任時にDギャラリーに展示された作品(VOCA展出品作)は印象深く、11年前の吉岡さんの若々しい姿(今でも十分若々しいが)が蘇る。
何を隠そう、吉岡さんはついこの間までのコンテンポラリーアートコースのパートナーだ。そして、吉岡さんと私の共通点は沢山ある。
まず、お姉さんと二人姉弟ということ、血液型がA型ということ、それに私の出身地の神戸市須磨区と吉岡さんの出身地の京丹後市はほとんど経度が同じということ(?) などなど。
ただ、大きく違うのは几帳面さ。コンテンポラリーアートコースの同じ部屋に居たのだが、彼の場所はいつもキチンと整理されていて、床もきれいに掃かれている。それに比べて私の場所はいつも雑然としていて、物が山のように積み重なっている。
この几帳面と”ずぼら”というところが大きく違う。
彼は版画を制作してきたが、私は元々油絵出身なので、その違いもあるのかな ?? とも思う。まあ、油絵を描いていらっしゃる方にもキチンとした方は多いので、私の勝手な言い分ではあるが、正確な段取りで進んでいく版画と違って、塗ってダメなら拭えるし、さらに上から塗れるという油絵の特性が、私の場合悪い意味で出ているのかもしれない。
そんなキチンとした吉岡さんの作品は”キチン”としている。
出来が完璧!これは学生にも良い手本になると思う。
ただ、ご本人はそこに少し不満があるらしい。キチンとしすぎている、と感じているようだ。しかし、なかなか完璧な仕事が出来る人は居ないし、皆、何かしら不満はある。
ところで、私は彼の作品の美しさの陰に「存在の不安」というようなものを感じることがある。無限の暗黒のように感じられる版画作品の背景色、そこに鮮やかに浮かぶ人工的な野菜などの植物、そして、誰もいない室内にそびえる氷山、降り続ける雪、立ち上る煙など。そこには人間が介在せずとも存在し続けるがそれ自体が人工的であるというパラドクスがある。
私は、まだまだ謎の多い吉岡作品をこれからじっくり見ることができる幸せを感じている。是非、多くの方に魅力溢れる吉岡作品をご覧いただきたいと思う。
会場は名古屋造形大学 D-1,D-2,D-3 ギャラリー
期間は4月2日(月)− 4月13日(金)
午前9時から午後5時(会期中無休)