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日常に養豚を  ー 命をいただく意識を持つための拠点 ー

外を知らない豚と養豚を知らない人。二者が交わることで生まれるであろう、「命をいただく」新たな拠点の提案です。地域から閉ざされた養豚場に地域とのつながりを持たせるため、養豚場が実際に経営する3店舗と周辺のカフェ、美容院、梨直売所に加えて養豚と食肉解体の機能を追加しました。二か所の敷地に対して「養豚の新天地」「消費の継承地」と役割を与えます。様々な目的を持った人が集まる中、豚が介入する環境が共通し、豚は人の暮らしの中で豚舎よりも自由な環境で暮らせる。豚がより良い環境で飼育されることに加え、地域住民のためだけでなく、この場所で商いをする事業者にも影響を与える提案です。

地域社会圏領域  繁平 亜由果 shigehira ayuka

担当教員コメント

三重県三重郡菰野町、養豚を中心とした食育・観光施設の計画である。特筆すべきは、繊細なリサーチから養豚産業の現状が抱える課題を抽出し、近隣の既存養豚場の生産・流通システムに組み込む形で、「屠殺前の豚のストレスを緩和する安息所」という新しい都市機能を発明している点である。計画敷地内には美容室やラーメン屋がすでにあり、これらの機能を残したまま安息場を計画している。つまり、髪を切っていると窓の先には豚がいて、ラーメンを食べていると豚が見える。その豚はこれから屠殺される。その事実を目撃し、食について偶発的に考えてもらう機会をつくる。という現代社会への鋭い批評を含んだ、地域に対する建築の提案である。