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記憶、なぞる、再構築

故郷である富山県朝日町を舞台に、まちと家族の記憶をテーマとした作品。
能登半島地震の日、祖父は亡くなった。私は祖父の死に未練を抱き、その存在を改めて見つめ直すようになった。 本作では、祖父が残した風景や遺品、言葉、家族との対話を手がかりに、祖父の存在を再構築していく。祖父の記憶をなぞる過程を映像や冊子、造形物として記録し、まちとともに育まれてきた記憶のあり方を見つめ直す試みである。

情報表現領域  田島 楓 Fu Tajima

担当教員コメント

田島楓の「記憶、なぞる、再構築」は、祖父の死という個人的な喪失体験を起点に、遺品や家の風景、家族との対話を丹念に拾い上げながら存在を再構成していく誠実な試みである。
冊子・映像・造形物を行き来する表現構成は、「なぞる」という行為を身体化し、鑑賞者にも追体験を促す装置として機能していた。それは記憶とは固定されたものではなく、編集され続けるものであることを示している。
一方で、主題として掲げられた〈まち〉との接続は限定的で、表現は主に家族と家というドメスティックな領域に留まっている。だからこそ本作の本質は、地域論というよりも、極私的な記憶の層をいかに他者へと開くかという問いにある。今後はその個人的アーカイブを社会的文脈へと繋ぐ視点を加えることで、さらに強度を増すことができるだろう。