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「住居と暗渠のあわい」

本計画は、一宮市に残る暗渠と建売住宅のあいだに生じる関係を、住宅の更新を通して再編する試みです。かつて農業や繊維産業を支えてきた水のインフラは、現在も畑や前庭などを通して生活の中に取り込まれています。しかし郊外住宅地では、環境や住民構成が変化しているにもかかわらず、建売住宅の構成は画一的な型を維持し続けています。
本計画では、暗渠に新たな建築を挿入するのではなく、住宅の構成を操作することで、生活の向きを暗渠側へと更新します。増築や減築、転用といった操作を通して、キッチンやリビング、ランドリー、玄関などの空間を暗渠とのあいだににじませていきます。こうして生まれる層を、住居と暗渠の「あわい」と捉え、郊外住宅地における新たな関係のかたちを提示することを目指します。

地域社会圏領域  入山 瑚太郎 Kotaro Iriyama

担当教員コメント

愛知県一宮市、古くは藍染めにも活かされ、しかし数十年前に暗渠化された水路が起点の作品です。その暗渠が一宮じゅうを横断して不思議な空白地帯として横たわり、場所によっては、管理・所有の(いい意味での)あいまいさから畑や庭に少しだけ使われているなどの絶妙な状況に着目し、この空白とともにあるより豊かな風景・暮らしを地域全体でどう想像できるか、小さな建築的操作の連なりで表現しています。造形は非常にささやかで、詳細や構法面でもすぐ始められそうな解像度を持っています。
一方で、土地所有・地域の主体・メンテナンス・郊外住宅開発計画への批評的視座、といった、この「現実的」「即応的」な所作が投げかける、地域社会・建築産業への問い・仮説の驚くべき飛距離の長さ、というギャップが本作の最大の魅力で、穏やかな介入による、私たちの目の前の風景のすぐ先にありえる、地域をつくる建築の可能性を鮮やかに見せています。