大切なもの。


今回の作品「大切なもの。」には様々な気持が込められており、自分と漫画が向き合う良い機会になったと思います。心をすり減らし人と人が関わりあう上で起きる感情など突き詰めてかけたと思います。
展示方法もこだわりがあり最終盤の雰囲気を楽しんでもらうためにカフェをモチーフにしました。
まるでその場面にいるかのような正面のカラーパネルやキャラクターの表情がよく見えるパネル、作中のセリフを設置し没入感を味わえるようにしました。また学生の間に描いた作品をまとめた短編集も制作し自分のこれまでを振り返る作品になったと思います。
人の心に訴えかける作品なので感想も他者に見えないように書いたものを箱に入れてもらうようにしました。製作にはかなり悩みましたが自分の成長にはとても大事な作品だったと思います。
映像文学領域 名村 英流 NamuraEiru
担当教員コメント
マンガを描くにあたって絵が上手い事はもちろん大事ですが「物語の落とし前」をつける事は新人において最も難しくかつ重要です。題材がパーソナルで深いほど作者は自分自身と向き合わなければならず、落とし前をつけるために弱さや醜さと直面し、そこからどのような希望を導くか、それは並大抵では出来ない創作の苦しみでもあります。名村さんは4年間作品の中で悩み続け、誰よりも「落とし前」をつけようとしてきました。フィクションとはいえ名村さんの描いてきたキャラクターは皆大きな悩みを抱えてそれに向き合おうとします。必ずしも最適解や結論が出ている作品ばかりではないのですが、キャラクターの悩みに付き合い続けた名村さんの「物語の落とし前」には読む人に深い印象を残し、考え抜いた故の迫力があり、表層的なキャッチーさに逃げない作品の強さがある。 それは桃美会賞に値する価値だし、今後の人生にも大いに力となると信じます。