sample stationery

沿岸の木綿計画

愛知県三河地方はかつて木綿産業で栄えていたが、今ではほとんど生産が行われていない。綿花には害虫がつきやすく繊維にするまでに多大なコストがかかるため、人は減っていくばかりだった。
本制作では、産業の問題点を土地の問題と絡めて解決することで、綿花産業を現代に必要とされるものに生まれ変わらせる計画を提案する。
敷地設定は三河地方に位置する西尾市沿岸の葦が広がる湿地帯で、新規産廃処理場の計画地でもある。建設のため既存の養鰻場は撤去されたが西尾市が建設に大きく反対しているため工事は中断、そこに残された養殖池基礎コンクリートには雨水が溜まり野鳥が住み着いている。本計画では、この土地の現生態系を活かしながら綿花を栽培し、綿製品に加工する。野鳥に綿花の害虫を食べるという役割を与え、また産業にはこの土地で栄えることで土地が誤った使われ方をすることを防ぐという役割を与えた。周辺との関係を築きながら問題を解決していくことで、これからの伝統産業の在り方を模索していく。

空間作法領域  牧 奈亜美 Maki Natsumi

担当教員コメント

この作品は建築環境から生産運営に関わるプロダクト提案、そして計画を空間体験的に展示したインスタレーションまで、総合的にデザインされた作品である。敷地である西尾市で祖父の代まで木綿産業に関わっていたという履歴を元に丁寧に地域の課題を掘り起こし、自然保護と地域開発という相反する問題を解決へ導くプログラムと、既存を最大限活かした空間デザインは秀逸であり高く評価した。
さらに、自身で実際に体験した機織りから得た織物工程への知識の再現、そしてなにより自宅で綿花を育て収穫しそれを元に製品素材の開発実験を行ったプロダクト提案など、建築に付随するデザインについてもよく検討がなされており今後の発展が期待される。
将来においても自然と素材との関係に着目し、人に安らぎを与える空間デザインを創っていってほしい。