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いとおかし  {2025年 桂冠賞作品}

「袖触れ合うも多生の縁」という言葉が古くから伝わるように、私たちはたくさんの人と出会い、別れを繰り返しながら生きています。しかし「縁」は、目に見えないところで紐のように結びつき、時には切れる、不可視化なものです。そんな縁を「見て触れられるもの」にできれば、人との繋がりについて考えるきっかけを与えられるのではないかと思いました。そこで、私たちの生活文化に浸透し、身近に存在する「お菓子」に形を落とし込むことで、どんな時も縁をそばに感じられる和菓子ブランドを提案しました。  そして縁を可視化するにあたり、糸編のつく漢字から連想した「8つの縁」という考えを基に作品を制作し、和菓子だけではなく、一つ一つのグラフィックから展示空間まで、作品の至る所から縁を感じていただけるように、細かな部分まで心を込めて制作をしました。

情報表現領域  北山 朝子 Kitayama Asako

担当教員コメント

北山朝子さんが卒業制作で選んだ題材「縁」と「和菓子」は、どちらも普遍的なテーマだったため独自性を持たせるのが難しく思われます。しかし、改めて縁という言葉の語源や由来を読み解くことで、彼女は糸偏のつく漢字から縁に関連付けた「結ぶ」「絆ぐ」「組む」「緩む」「紡ぐ」「絡む」「締める」に縁語である「切る」を含めた8つの言葉を見出し新たな着想を得るができました。 そして、8つの言葉をロゴデザイン化、それぞれにストーリー性を持たせたことにより目に見えない縁を可視化して、核心となるキービジュアルを手繰り寄せることに成功しました。8つの言葉は、さらに他者への感謝の念を丁寧に作られた和菓子へと落とし込むことで、心を伝える日本のよい文化を再認識することに繋がりました。展示は白と赤を基調に細部までこだわり抜いた空間へ。一度見たら忘れることのできない人々を魅了する作品です。