プリズム


私の設計は、名古屋駅西のリニアの工事で全面芝生になる予定の土地の代替案。この駅裏の土地には、戦後の区画整理に始まり名古屋駅の発展までの間でありえないくらい沢山の要素と文化が高密度に存在し、工事で取り壊されたのは、その全ての要素の衝突地点だった。
この敷地の面白さは、衝突地点の消滅により、エリア同士が点では無く面として対峙するようになった事。そしてそれを設計で谷の向こう側に見える地域への10の相互作用について考えた。
この建築のように、一見めちゃくちゃに見える要素の集合も、突拍子もない形も、それは結晶であり、豊かさなのだ。結晶を抜ける光が七色に広がるように、敷地を通る人達の生活が彩られる、そんなプリズムのような建築。
この歪なプリズムは、幾つもの多面性を持つこの地域の、カオティックなこの街だからこそ輝く。この街がこの街たる裏付けであり、あったはずの過去としての未来への証明なのだ。
地域社会圏領域 中山 結喜 Nakayama Yuki
担当教員コメント
自身の地元、名古屋駅西口(裏口)エリアで進行するリニア駅上部芝生広場計画のオルタナティブとして提案した建築。かつての街の建築や都市空間に、陰・陽ともにありえない密度で存在してきた雑多な表情・スケール・エレメント・関係性などの共存を膨大なドローイングで身体的に探究したのち、リニアの駅空間がそのひとつとして新たに加わるべくあけた大きな穴と、既存の街がもっていた質を造形や動線、ファサードなどに転写し、街の多面性が結晶体(プリズム)のように凝縮し、近づく方向や距離により様相が変化して、豊かに連なっていく建築群の設計に行き着きました。開発で追いやられた社殿をもとに戻したがゆえに浮遊している椿神社や、街の看板・ブラインドであるべく巨大化した駅トイレ・換気塔など、「変」な建築的ハイブリッドの連続がこの場所・風景の豊かさとしてあるべくしてある、そんな「地域をつくる建築をつくる」可能性を鮮やかに見せてくれる作品です。