繰り返すっていう意味で loop か layerか反復か


少女のモチーフ自体は元々描いてきた概念としてのキャラクターであり、特定の誰かを指すものでも無ければ名前があるわけでもない。 その少女を実際に自身の記憶にある場面に配置し、再構成を図った。 同じ手法で下絵を何枚もパネルへ描き写す。 同じ要素で構成されたキャラクターを何度も描く。 既に何層も描いた表面に、また別の方法で塗り重ねる。 描き終わった絵を見て自身の記憶に紐付けされた感情に懐かしむ。 絵を描く上で、私はこれを繰り返している。 自分の中で絵を描くという行為と絵画はいまだに立ち位置を決めかねており、確定する兆しもない。 ただ、もはやあやふやになりつつある記憶と動作を継いでは接ぎ、物質として残すという点から私にとっては一種の捏造を含む記録なのかもしれない。
美術表現領域 加藤 千晶 Chiaki Kato
担当教員コメント
加藤千晶の『繰り返すっていう意味でloopかlayerか反復か』は、マンガ/イラストレーションの表現形式を取り込んだ絵画である(よく観察すると見えてくる継ぎ目、図に複数の黒を使われるなど対面した時に見えてくる要素も確信的だ)。色の無いひしめく図像を追って行くと、そこには果たして奥行きがあるのだろうか?確定的なイメージとは裏腹にタイトルがなんとも宙ぶらりんなのは作者自身が自分の生み出した構造に決着しかねているからだろう。この作品は複数のパネルで構成されている。当初は3枚からはじまった世界は展示スペースに合わせてスクロールしながら拡張していった。加藤の作品のキモはこのスクロールしながら拡張する構造にある。全方位型の巻物でありスマホをアナログでアウトプットしているような独特の世界の表し方は、はじまりとおわりを内包しつつ、つねに括弧つきの完成で今を留めている。ロマンチックな言い方になるが、4年次の卒業制作で起こったビッグバンが加藤の生の時間と同期しつつじわじわと拡がっていくのである。