水野智路さん

親子で「練り込み」陶芸を行う卒業生、水野智路さん、水野教雄さんにインタビューいたしました。


Instagramで話題の「練り込み」陶芸クリエイター

 

―今はどのような生活をされていますか?

大学生時代からゲーム屋さんでずっとバイトしていました。その後、2018年3月まで障がい者施設で2・3年間陶芸を教えて、今は陶芸一本です。

―どのような技法を使っているのですか?

練り込みという技法を使っています。おそらく皆さんの考えている陶芸のイメージよりも計画的かな?まず図面を紙や頭の中に描き、必要な粘土の色味や質感、量を考えて作っています。ベースの粘土を決めて、鉄やクロム、コバルトなどの鉱物で粘土に色を付け"色土"を作り、下から積み重ね、ドット絵みたいに埋めていく技法です。今作っている星柄は中々難しくて、数ある柄の中でも結構時間がかかるものになりますね。

 

―陶芸家以外にやりたい仕事はありますか?

野球選手のバットを作る職人とか、やってみたいです(笑)
基本的に何かを作ることが好きなんです。フットバッグという競技があるのですが、少し前からその試合で使えるボールを制作していて、選手の方にプレゼントしています。ただ作るだけでなくて、布の柔らかさや触り心地、一回り小さい方が良いのか、ちょっと大きい方が良いのか、中身の量はどうするか…色んな視野で、使う選手の方が一番良いと思うものを使って活躍してくれるのが、作る側としてはとっても嬉しいので。

―Instagramはどのような経緯で使用し始めたのですか?

元々友達に向けて、実際に作る時の動画を載せ続けていました。ある日「この動画、私のところで紹介しても良いかな?」と海外の方から英語でメッセージが届いて、「オーケー、プリーズ ポスト センキュー」とだけ返してね(笑)そうしたら、また違う人が「すごいね!俺のところにも載せても良いかい?」って…そんな感じで段々と海外の方々中心にメッセージが届くようになり、僕のお仕事をたくさん広めてくださるようになったんです。
SNSに載せている動画は、僕にとっては当たり前の日常なのですが、それらを面白いことだと感じた皆さんが紹介してくださっている。だから、僕が特別すごいってわけじゃなくて、紹介して下さった皆さんが、すごいんですよ。

―どのようにInstagramを利用していますか?

有名になろう!と思ってやるより、こんなこと普段やってるよって、記録として利用しています。だから作品だけでなく、飼っている犬も、父とのキャッチャボールも投稿しています。
調べてみると分かると思いますが、世界の陶芸家は結構Instagramを使っているんですよね。今は専用のビジネスページもあるほどですし、ちゃんとした企業さんからも、実はSNSのメッセージ経由が多いんです。昔だとこんな簡単に個人へ連絡なんて来なかったけど、今はそういう時代なので、窓口だと思って作家さんは1つぐらいはSNSを使うべきだと思います。

―Instagramのオススメの使い方はありますか?

あんまり人の目を意識しすぎないで、頑張らない方がいいんじゃないかな。先程も少しお話したのですが、自分の見ている景色は、自分は気付いていないだけで他の人にとって特別で溢れているんです。だから、日常的に楽しんで投稿する方が受け入れられやすいと思うよ。もし何人かのチームでSNSを使うなら、曜日で担当を変えて回してみても面白いかもね!目で見える世界は人それぞれ変わるので、レパートリーが増えるんじゃないかな。

―Instagramでも人気が出ていますが、実際に展覧会や販売会に出すことは必要だと思いますか?

もちろん展示も、販売会に出ることも大切ですね。展示してみたら、「こういう模様がほしいのですが、作れますか?」と言われ「できますよー」って実際に作ってみたり、「これができるなら、あんなこともできそうね!」というヒントをくださったり、パンダの人気があるからパンダ柄チャレンジしてみようかなと思ったり。お客さまの声が聞きやすくて、制作の助けになっています。なので会場では、なるべくそこに居るようにしてお客さまとお話しています。作家の人で、緊張しちゃうから隠れて見ているだけの人もいると思うけど、話した方が絶対にヒントがもらえる。購入して下さった方から「使っていますよ!」「ごはんが美味しく感じます」って、色々な感想が聞こえることも、良い経験になりますよ。

―前向きな姿勢がとても素敵ですね。最近、そのようなヒントを得た取り組みはありましたか?

お茶碗を購入して下さった方が「もったいなくて使えないので、飾っています。」とおっしゃられていたんです。僕もその気持ち、すごくわかるんですよね。お茶碗といっても、そこまでリーズナブルなわけでもないから、汚したくないとか思っちゃう。それなら飾っておこうかな、でも使わないともったいないよなって…。だからいっそのこと、その葛藤を抱かせないように飾ることしかできないお茶碗を作ってしまおうと、小さなサイズのお茶碗を作ってみました。これだったら、飾るっていう選択肢しかないので、迷わないですよね(笑)

 

△  パンダ茶碗と、"飾るための"パンダ茶碗

水野教雄さん(父):
こうやって模様を小さくすることも、簡単そうに見えてすごく難しいんですよ。均等に力を入れて、絵柄をたもったまま小さくしなきゃいけない。加減が上手く出来ないと、絵柄が捻じれちゃう。この年齢でここまでやれるのは、息子ながら、すごい腕前だと思います。私が息子の年の時には、ここまで綺麗にできなかったかな。
他にも、練り込みは繊細な部分があるんです。使う色の分の色土が必要になるので、多くの土の管理を同時に行えるようにしないといけなくて、土練機(粘土をこねる機械)の掃除やメンテナンスを細々しなきゃいけないんですよ。それをさぼっちゃうと、粘土がマーブル模様になっちゃったりする。なので、未だに昔ながらの簡単な仕組みで取り外しが可能なものを愛用しています。

―考え方ももちろんですが、やはり技術や手間も必要なのですね。
そういえば、お父さまも名古屋造形卒業だとお伺いしました。

水野教雄さん(父):
はい、名古屋造形大学が短期大学の頃の卒業生ですね。妻も造形卒です(笑)
元々、私の親も練り込み作家なんです。ですが兄がいたので、次男の私は継ぐ予定も陶芸をする気もさらさらなかった。両親も特に「こうしなさい、ああしなさい」と言ってこなかったですしね。なので高校までは普通科で、いざ将来を考えるとなった時に、やっと美大を視野に入れました。一般企業に就職して社会で生きていく道は合わないだろうなと思ったんです。
そう相談したら、彫刻を習っておけば立体もデッサンも習えて良いんじゃないか?という話になり、名古屋造形大学へ進学する事に決めました。

 

△  智路さんと、智路さんの仕事を見守る父・教雄さん

―会派に入ってご活躍されているそうですが、卒業後はどうされたのですか?

水野教雄さん(父):
卒業の後、専攻科に進学し、その後職業訓令校に通い、釉薬の試験を受け、実家の手伝いを始めました。当時実家が物凄く忙しく、兄と父の手伝いをしていました。傍ら、父も兄も会派に入っており、年に1回公募展示に向け制作を始めていたんです。私は会派などは全くわからなかったのですが、手も空いてるなら作ってみようかなと始めたら…入選しちゃいまして(笑)それが何度か続き、周りから「水野家は次男も作家の路に進むんだな。」と思われ始め、4年後、そろそろ独立しろと。最初は長野で窯を持ったんですけど、寒くて戻ってきちゃいました(笑)それで26歳の時に、瀬戸でこの工房を始め、現在は息子と制作しています。

―何故、練り込みをやり続けようと思ったのですか?

面白かったんです。鋳込み、ろくろ、大きい粘土をこねる、絵付け…色んな粘土の技法があるんですけど、その中で、合う合わないがある。練り込みをやるためには、計算して、図面を描いて…って地道な作業が必要なんです、そういう作業も楽しめる性格だったので、続けられているんじゃないかな。

 

△  教雄さんの制作した図面

―お二人にとって、名古屋造形大学はどうでしたか?

水野教雄さん(父):
当時は学生運動がすごくて、みんなで大学に泊まって制作してましたね。先生からは「とにかく学校に来なさい、物作りをしたい人がたくさんいるこの環境に身を置くことが、とても必要なんだ。」と言われており、そういう意味でも名古屋造形大学は、本当に価値のある環境なんだなと感じていました。
私は彫刻へ行きましたが、造形は専攻による垣根がないので、デザイン学んでいる人と仲良くしていました。今もそういう人達と人脈があることで、とても助かっていますね。
水野智路さん:
何か作ってみたいなーという気持ちで、産業・工芸コース(現ライフデザインコース)に入学しました。在学時代は木工作品を制作していましたね、ルービックキューブ型のイスとか、重ね合わせることが出来る2つの台とか。大学には面白くて個性的な人が多くて、作家になっている知り合いもいるし、起業して会社を興している人もいます。学生時代に何かやりたいことを見つけながら、様々なものづくりに挑戦させていただける場所でした。何か作ろう!と思って進んだという点は親子一緒です(笑)

お二人とも、ありがとうございました!





水野智路

 

2009年
第3回「陶のあかり路」 優秀賞
2013年
第一回「瀬戸・藤四郎トリエンナーレ」 入選
あいちトリエンナーレ事業「水野智路 展」
2014年
ジェイアール名古屋タカシマヤ「暮らしの手技」ギャラリー 水野智路 練り込みの風景 開催
ジェイアール名古屋タカシマヤ「SETO-MONO展2014 -10人のアトリエ-」
2014年
ジェイアール名古屋タカシマヤ「暮らしの手技」ギャラリー 水野智路 練り込みの風景 開催
ジェイアール名古屋タカシマヤ「SETO-MONO展2014 -10人のアトリエ-」
2015年
ジェイアール名古屋タカシマヤ「暮らしの手技」ギャラリー 水野智路 練り込みの風景2
ドームやきものワールド「男前 UTHUWA」ドームやきものワールド賞 受賞
2016年
LEXSUS NEW TAKUMI PROJECT 2016粘土[匠] 選出
ドームやきものワールド「男前 UTHUWA」銀賞 受賞
2017年
ジェイアール名古屋タカシマヤ「水野智路 展」
京都タカシマヤ 器百選コーナー「水野智路作品展」
渋谷ヒカリエ「made in Seto~瀬戸ツクリテの手仕事~」



水野教雄

 

1950年 愛知県瀬戸市生まれ
名古屋造形芸術短期大学 卒業

日展 会友 入選39回 中日賞 受賞
日本新工芸家連盟 審議員
日本新工芸展
会員賞5回、会員佳作賞、工芸賞2回、帖佐美行記念賞、加藤卓男賞、松坂屋賞 受賞
オーストラリア展 参加
中日国際陶芸展奨励賞 受賞
イタリア・ファエンツァ国際陶芸展 招待出品4回
朝日陶芸展’78賞 受賞
第5回日本招き猫 大賞 受賞
世界デザイン博覧会 出品
愛知万博貴賓室、愛知県館作品 展示
2010年瀬戸市指定無形文化財「陶芸 練り込み」保持者に認定

出展のお知らせ

 

千年以上に亘るものづくり文化の精神を受け継ぐ「瀬戸物」の若きツクリテ10名による即売会イベント。
水野智路さんが選出されております。ぜひお越しくださいませ。

会 期:2018年10月26日(金) - 2018年10月28日(日)
場 所:COURT
事前申込不要