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だれも知らない生き物

街に溢れる日用雑貨や工業製品によって形成された、大きな心臓。
心臓内部には大きなファンがついており、周囲の空気を心臓内に取り込むことで膨らみ、その空気を吐き出すことでしぼむ。この心臓は空気を血液の代わりにし、その拍動によって周囲の空気を循環させている。

この心臓には持ち主がいる。
心臓がここにあるということは、心臓が設置された空間は心臓の持ち主である大きな生き物の身体のなかだということになる。そして、大きな生き物の体内にいる私たちは、大きな生き物の身体を構成する一部である。
私たちは大きな生き物の赤血球かもしれないし、脳細胞かもしれない。生き物の身体のなかというこの世界で、この生き物を生かし続けるための、それぞれの役割を担って生きている。

心臓は街に流れる空気を血液の代わりとし、拍動を続ける。周囲の空気を循環させ、この社会を一つの生命体にする。

私たちはこの心臓の拍動によって動かされ、心臓の持ち主であるこの世界を循環している。
そして私たちは、生き物の一部である自分が生き続けるために、この生き物を生かし続けなければならない。この生き物が死なないように、誰かと離れてしまわないように。


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