2017年度 名古屋造形大学 入学試験要項
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256-3問一 傍線⒜「変貌」、⒝「律儀」、⒞「一閃」、⒟「麻痺」、⒠「総帥」の読みを平仮名で書きなさい。問二 空欄  Ⅰ  ~   Ⅴ   に入る最も適当な語句を次の中から一つずつ選び、番号で答えなさい   (番号は重複できない)。  1 いま  2 こんな  3 いったい  4 よく  5 ただし問三 傍線A「そうした奇特なこと」とはどのようなことなのか。問題文中にある文を用いて答えなさい。問四 傍線B「この町の緑は、三つほどあるゴルフ場にしか残らぬのではないか」について、筆者はなぜこの町の緑が   ゴルフ場にしか残らないというのか。簡潔に答えなさい。問五 傍線C「この冬は、いまひとつ、大自然の力に圧倒された。」について、筆者が大自然の力に圧倒されたものの   一つは大雪であるが、もう一つとは何か。本文中より十文字以内で抜き出して答えなさい。問六 傍線D「経営としては、世の中の役に立って、儲けることだ」について、ここでいう経営とはどのようなことな   のか。簡明に説明しなさい。問七 傍線E「考えぬ足」について、筆者は何が原因で「考えぬ足」にしてしまうというのか。その原因となることを、   本文中より十文字以内で抜き出して答えなさい。6-4二 次の文章を読んで後の設問(問一~問六)に答えなさい。解答はすべて、解答用紙の解答欄に記入しなさい。 ある日、槍やり投げの選手を小説に書こうと思い立ち、関西学院大学陸上競技部を取材させてもらった。 なぜ槍投げなのか、自分でもきちんと説明はできない。日本語には「ふと」という使い勝手の良い言葉があるが、まさにふと、どこからともなく槍が飛んできて目の前の地面に刺さった。次の瞬間、「では今度の小説は槍投げにしよう」 と、私の心の声がささやいていた。 これ以外に説明のしようがない。 小説を書き始める時はいつもこんな調子だ。私の頭に立派なテーマがまずあって、それを表現するのにふさわしい題材を探すのではなく、こちらの都合にはお構いなく、外から不意に何かが飛び込んでくる。その何かに関わってゆくとどんな小説の世界が拓ひらけるのか、見当もつかない点がなかなか恐ろしい。つまりプランが立たないのだ。 しかし不思議なことに、そAの何かが必ず物語を隠しているという確信はある。あるいは確信というほどメイカイなものではなく、書かれるべき物語があるからこそ、作家のもとへやって来たのだろう、と自然の流れのままに思い込んでいるだけかもしれない。 いずれにしろ、地図も磁石も持たず、目的地も知らないまま、初めての場所へ探索に出ることになる。 去年、チェスの小説を書いた時もそうだった。チェスなど一度としてやったためしもなく、ルールさえ知らないのに、〝ふと〟チェスの駒が掌に転がり落ちてきた。 あの時は麻布学園チェス部の皆さんにお世話になった。雑然とした細長い部室で、中学一年生から高校三年生までの少年たちがチェスを指していた。傷だらけになった小さな安物のチェスセットをテーブルに広げ、肩をすぼめるようにしながら駒を動かしていた。窓の向こうには六本木ヒルズがそびえ、校庭からは運動部の元気のよい声が響いてきた。そんな中、少年たちは一心にバンジョウに刻むべき最善のキセキを追い求めていた。 彼らの姿は私に多くのイメージを授けてくれた。一つのことを考え抜いている人間の横顔はこんなにも貴いものなのか、と驚いた。チェスという世界に旅をしなければ、出会えない驚きだった。結局、主人公の少年がただひたすらチェスをしているだけの小説を五百枚も書いてしまった。 さて、今回は槍投げである。関学陸上競技部の練習グラウンドは住宅地の真ん中にあり、まずそのことにびっくりする。普段よく近所を車で走っているのだが、こんなにも広々とした、さえぎるものの何もない空間が隠れているとは思いもしなかった。扉一枚向こうは、日B常生活とは全く違う種類の風景だった。 大事な練習時間中であるにもかかわらず、投とうてき擲チームの学生さんたちは実に快く対応して下さった。レイギ正しく朗ほがらかで、全員、自分の子供にしたいくらいだった。 槍は想像よりずっと長かった。例えばテレビでオリンピックの槍投げを見ていると、自分の体に馴なじ染んだ道具を手にしているという雰囲気で、さほど長いとは感じない。けれど目の前にあれば、それは間違いなく長すぎるのだ。男子用は二メートル六十センチ、重さは八百グラムあるという。「ほう」と感心しながら私はその数字をノートにメモする。 スパイクがまた変わっている。右投げの選手の場合、槍が手を離れる瞬間に軸となる左足は、くるぶしまで覆って足首を支えるタイプ。反対に右足はくるぶしの下までしかない短いタイプ。つまり左右違う種類のスパイクを履く。そのためキセイ品はなく、すべてが特別注文なので、当然価格も高くなる。「僕は高校時代、大会で優勝したお祝いに先生が作ってくれたスパイクを使っています」 三年生のA君が見せてくれたのは、数々の勝負をくぐり抜けた跡が残る、大事に使い込まれたスパイクだった。 秋の夕方の空に飛ぶ槍を、私はいつまでも飽きずに眺めていた。若々しい肉体から解き放たれた槍は、震えながら空(a)(b)(e)(c)(d)

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