午前11時、名古屋栄三越で「田淵俊夫展」を観る。画業40年東京芸術大学退任記念と添えられ、初期作品から大本山永平寺・鶴岡八幡宮への奉納襖絵まで代表作56点が展示されている。
永平寺襖絵は、NHK新日曜美術館で紹介され感動した、田淵ファンの私は見逃せない展覧会。天才だと思っていたが、初期作品を拝見してその凡庸さにむしろ大変嬉しかった。努力の人がその才能を自ら芽吹かせたのだと知る。墨彩による枝垂れ桜は、最高。
正午、愛知県美術館ギャラリーの「第16回名古屋造形大学卒展 第5回大学院修了展」へ。卒展最終日で朝から多くの来客があると聞き、テンションが上がる。既に例年の入場者数を大幅に更新している。

午後1時、日本画家で名古屋造形大学客員教授の上村淳之先生がお見えになり、日本画の卒展会場で講評会を行なっていただいた。いつもながら、やさしく厳しくユーモア溢れる講評に、学生以外の観覧の方も足を止め聴き入っていた。

午後3時30分、5時の終了に近づいて入場者はピークになる。一番人気のデジタルメディアデザインの展示室では、100人以上が入り、展覧会場というよりまるでテーマパークのようだ。作品発表という視点にエンターテイメントが加わって、「楽しい」の声が溢れている。

4時50分、終了前に同センター10階のレストラン「ウルフギャングパック」へ。卒展と同時開催で愛知県芸術文化センター内あちこち開催された「新進アーティストの発見inあいちARTS CHALLENGE 2009」懇親会に出席。
会は、美術の他音楽、舞踊も含んでおり、年齢も20代からずっと上まで、楽しいパーティだった。名古屋造形大学スーパーレクチャーでお呼びしたコンテンポラリーダンサーの平山素子さんと久しぶりにお会いし親交を深める。
6時、パーティを抜け8階の卒展会場へ。搬出半ば「お疲れさま~」の声をかけながら取材。2週間の卒展が終わった、祭りの後の淋しさだ。




★ 卒展観覧記
産業・工芸デザインコースの岩下知姫(いわしたさき)さんは、臈纈染めによる大作「鱗」を出品。染色技法を屈指してその魅力をふんだんに見せている。臈纈染め固有の海底の表現に注目。

視覚伝達デザインコースの須川浩平(すがわこうへい)君は、2009年度版「漢字る日めくりカレンダー」のデザイン。365点の漢字による擬音表現は、見始めるとついつい全部観てしまうという誘惑にかられる。デザインにコツコツというアプローチがあることを再確認。


産業・工芸デザインコースの村田新悟(むらたしんご)君の「Scarab」は、駅前など特に混雑する都市に対する提案で、形態する移動装置、新しい自転車の模索といえようか。ファッショナブルで楽しいことが、新しいライフスタイルとなることを感じさせてくれる。

大学院工芸の中園義光(なかぞのよしみつ)君は、ceramics furniture「つくえ。」「いす。」「ぜん。」を制作。その存在感は、機能を越えて精神性に届いてくる。

洋画コース藤井宏明(ふじいひろあき)君の「私は私という死すべき存在に対して一体何ができるのだろうか」のタブロー。生死、肉体と心、表現力を越えて観る者に問いかける。

視覚伝達デザインコース・デジタルメディアクラスの牧野ゆきの(まきのゆきの)さんは、「エコな画像投稿掲示板サイトの提案」。サイトのあり方は、社会問題にまで発展しているが、サイト自身のもんだいではなく、そのすばらしいシステムに応える私たちの人間としての力の問題である。気持ちの良い提案である。

産業・工芸デザインコースの木場仁美(こばひとみ)さんの「あぶく」は、壁にそのタイトルのままあぶくを楽しく設置。テグスを染めて、アッといういい落とし所を持った作品。いいなあ。

大学院メディアアートの楊珪宋(ようけいそう)さんは、巨大な機会仕掛けによる作品「スピン・オフ」を発表。妊婦の体が左右に揺られ、観る者に心と体から強いショックを与える。制止すると生命を通した身体を考える時間が与えられる。

