久しぶりの東京の朝。目的は展覧会。まず、六本木ミッドタウンへ。
午前11時、21_21 DESIGN SIGHTで「東北の食と住 テマヒマ展」を観る。

デザイナー佐藤卓と深沢直人、フードディレクター、ジャーナリスト、映像作家、写真家による丹念なリサーチのもと、全54品の東北の食と住が展開される。
映像による紹介は、厳しく美しい東北の自然の中でテマ(手)ヒマ(時間)をかけて作られるデザインが輝いている。作る人の顔と手がまぶしい。
実物展示による紹介は、一点一点が丁寧に大切に並べられている。凝視することで、それらのもつ繊細で逞しい力が見えてくる。
正午過ぎ、森美術館へ。「LEE BUL イ・ブル展:私からあなたへ、私たちだけに」を観る。

韓国女性アーティストであるイ・ブルは、韓国の軍事政権から民主化を生き、身体から都市まで、破壊と増殖に強烈なメスを入れ続けている。そして、そこからはキラキラとした殺意を感じる。
同美術館で「MAMプロジェクト016:ホー・ツーニェン[何子彦]」が同時開催されている。

シンガポール在住のホー・ツーニェンは、歴史や物語に基づく作品を通して、詩的かつ演劇的な映像世界を見せる。立ち去りたい嫌悪と目を背けることを拒む反発力が心を圧迫する。
ハードな2つの展覧会を見終えて銀座へ。
クリエイションギャラリーG8とガーディアン・ガーデンで「広川泰士写真展『旅の途中〜』」を観る。リクルートが運営する2ギャラリーで展開するクリエイターの全貌を見せるタイムトンネンルシリーズのVOL30である。

広川泰士は、1950年生まれで私と同じ年、そこから見えてくる同時代感は、広告写真の感性、ドキュメントの視点ともに多くの共感を持つことができる。特に日本全国にある原子力発電所を現代の風景として切り取った「STILL CRAZY」は、対象と深く関わりながら早急な結論を軽薄に提示することに疑問を感じ、凝視することの向かい合い方が見える。
SHISEIDO GALLERYで「Lineament さわひらき展」を観る。

さわひらきは、ロンドンに住む日本人アーティスト。友人の記憶喪失に合い「記憶喪失になったことによって、食べ物の味すらわからなくなる」という衝撃をシュールな映像によって見せている。うつろな目の人物の表情は、記憶とは何かをえぐり出す。
銀座グラフィックギャラリーで「キギ展 植原亮輔と渡邉良重」展を観る。

二人は名古屋造形の卒展に記念講演として、講演をいただいたことがある。二人が務めていたD-BROSを退社、今年の1月に株式会社キギを設立。発表作品はD-BROS以来のものである。多くのブランディング、プロジェクトを手がけて来たが、グラフィックデザインの新しいあり方はいつも逞しく提示される。しかし、いつも軽やかにファンタジックでもある。
メゾンエルメス8階フォーラムで「望郷/山口晃展」を観る。
会場には、10メートルはあろうかと思われる電柱<忘れじの電柱>が数本立っている。明らかに電柱の様子を呈しているが、電線はなく、オブジェとしての魅力満載である。山口も「造花による生け花」と照れているが、それがこのスケールで展開されることが、観る者を圧倒する。
http://www.art-it.asia/u/maisonhermes/2aMXQdZlgfwYi1GcBRxn
銀座松屋7階デザインギャラリー1953で「第79回毎日広告デザイン賞入賞作品展」を観る。

広告デザインと向き合うこと、コンクール、展覧会という違和感の中で観る広告は、一見空々しくもある。その上であえて「広告とは何か」を考えることをグラフィックデザイナーとして続けたいと思う。
青山へ。ギャラリーハウス・マヤで「花井正子展 On the road 紀州」を観る。

花井正子は、私の主宰するスペースプリズムでも発表を続けている作家である。この夏に熊野古道なかへち美術館で大作を含む80点の大個展を開催する。今展は、そこから抽出されたものである。心の痛みとやすらぎが溶け込んで行く作品であった。
ギャラリーときの忘れもので「AKIRA GOMi 1972 2012/倉俣史朗&村上麗奈」を観る。

写真が時間を留める芸術であることを強く認識する作品である。その時のモチーフ、技術、覆っている社会事情、研ぎすまされた五味彬のナイフが見える。倉俣史朗のミス・ブランチに切ない記憶が甦る。
スペース・ユイで「安西水丸+和田誠AD-LIB5」を観る。

キャラクターの異なる二人のトップイラストレーターがコラボレーションで展開する。一画面に描かれた二人の絵は、タイトルにもとづいてセッションし、謎掛けをし、とても楽しそうである。
OPA galleryで「木のある風景」展を観る。

5人の女性イラストレーター(井上文香、大広ようこ、川崎真奈、篠原いずみ、豊福摩希子)の競演。重なり合う画風に時代の求める空気を感じることができる。
HB Galleryで「亀井武彦墨描展 たまゆれて」を観る。

亀井武彦さんは、尊敬する映像作家、イラストレーター、多様な顔を持つクリエイターである。今展は、龍、兎、金環日食を描いている。龍、兎はさすがであるが、金環日食への思いは強烈で神を描いているようにも見える。誰もが描いたことのないであろう金環日食について、亀井さんと楽しく談義する。
渋谷に行き、昨日観たがとても観きれなかったギャラリーshibuya355の「大迫修三の原画・版画コレクション展」を観る。やっぱり凄い、楽しい。ギャラリーで大迫修三さんと、あの時代について語り合う。あの時代とは、同時代をグラフィックデザイン、イラストレーションと深く関わって生きて来た者同士が面倒な説明なしに語ることの出来る時代である。
夜8時30分発の新幹線で名古屋に戻る。充実の東京であった。